Kernekoncepter
6Gでは、通信とセンシングの統合が必須となり、フルデュプレックス(FD)技術を用いた統合通信・センシング(JCAS)システムが注目されています。本稿では、従来の研究では見落とされてきた同時送受信時の課題や、FD-JCASシステムの実現に向けた新たな研究課題について包括的に考察します。
Resumé
6Gにおけるフルデュプレックス統合通信・センシング:機会と課題 - 実用化に向けた包括的な分析
本稿は、次世代の無線通信技術である6Gにおけるフルデュプレックス(FD)技術を用いた統合通信・センシング(JCAS)システムの実現可能性と課題を包括的に論じた論文です。
6Gは、従来の通信速度、低遅延性、革新的なアプリケーションの提供を約束する、変革的な進歩を遂げた通信技術として期待されています。JCAS技術は、同一周波数帯域と共有ハードウェアアーキテクチャ内で通信とセンシング機能を相乗的に活用することで、周波数輻輳の課題に対処し、6Gにおいて不可欠な役割を果たすと考えられています。
従来のJCASシステムは、通信とセンシングを同時に行うために自己干渉(SI)除去技術を用いていましたが、データ送信には半二重(HD)モードを使用するか、同時送受信時の干渉を無視したFD設定を採用していました。その結果、周波数帯域の交互使用や同時送受信時の干渉の影響を考慮していないため、通信のスペクトル効率が制限されていました。
従来のJCASシステムの展開シナリオ
従来の研究で検討されてきたJCASシナリオは以下の3つです。
ケースA:ダウンリンク専用、モノスタティックレーダーセンシング
基地局(BS)がダウンリンク(DL)方向にデータを送信し、BSと同一場所に設置された受信機(Rx)がDL信号の反射波を利用して、指定されたセンシングエリア内のターゲットを検出・分析します。
ケースB:アップリンク専用、モノスタティックレーダーセンシング
半二重(HD)モードでアップリンク(UL)データ送信のみを考慮し、FD BSで受信した信号からセンシング信号とUL通信データシンボル、SIを分離・復号します。
ケースC:アップリンクとダウンリンクの両方、モノスタティックレーダーセンシング
FD JCASシステムにULとDLの両方のユーザーを含めますが、モノスタティックセンシングのみを考慮し、UL信号はバイスタティックレーダーによるセンシングには活用しません。