この記事では、スタンフォード大学のディラン・ドッド氏が、痛風、高尿酸血症、結晶誘発性疾患ネットワークの年次研究シンポジウムで行ったプレゼンテーションの内容を紹介している。ドッド氏は、腸内細菌叢がどのように高尿酸血症と痛風の治療に役立つ可能性があるかを論じている。
食事中のプリン体は、体内に吸収されて尿酸に変換される。ドッド氏によると、腸内細菌の中にはプリン体を栄養源として分解し、自身のエネルギーや構成要素に変換するものがあるという。これらの細菌がプリン体を分解することで、腸からのプリン体の再吸収が制限され、尿酸値の低下につながる可能性がある。
ドッド氏は、ヒトの腸内に最も多く存在する乳酸菌の中には、プリンヌクレオシドを代謝できるものがあると指摘する。これまでの研究で、乳酸菌の中にはプリンヌクレオシドを代謝できるものが確認されているが、その多くは企業秘密であり、さらなる研究ができない状態である。また、少数のヒトを対象とした試験では、有効性が示唆されているものの、患者数が少なく、結果はまちまちである。
ドッド氏の研究グループは、一部の細菌が尿酸を短鎖脂肪酸に分解する経路を発見した。この研究では、2種類の乳酸菌を含む様々な細菌株を、嫌気性条件下で様々なプリンヌクレオシドと共に培養した。その結果、乳酸菌は尿酸を分解しなかったものの、他の細菌種は尿酸を分解した。また、乳酸菌はプリン体由来のヌクレオシドを含むヌクレオシドを、より小さなヌクレオベース化合物に変換できることがわかったが、生成されたプリン体は消費しなかった。一方、他の種類の細菌は、すべてのプリン体を「貪欲に」消費したという。ドッド氏のチームは現在、これらの代謝経路を促進する細菌の遺伝子経路を特定する研究を進めている。
ドッド氏は、これらの研究結果から、様々な治療法への応用が期待できると述べている。一つは、乳酸菌のプロバイオティクスを用いて、プリンヌクレオシドをヌクレオベースに変換することで、小腸での吸収を抑制する方法である。また、細胞外再吸収によって産生された尿酸を短鎖脂肪酸に変換するために、他の細菌を利用できる可能性もある。短鎖脂肪酸は、抗炎症作用など、様々な有益な効果を持つことが知られている。さらに、腸内で産生された尿酸を分解するように、プロバイオティクスを遺伝子操作することも考えられる。
ドッド氏は、プロバイオティクスは患者の受け入れが高く、一般的に安全であるという利点があると指摘する。また、既存のプロバイオティクス製品の中には、プリン体分解能を持つものもあるかもしれないが、まだ試験されていないものもあるという。しかし、菌株によって効果にばらつきがあり、ヌクレオベースを減少させるためには、プロバイオティクスの処方を最適化する必要があるだろう。一方、尿酸を分解する細菌は、健康な人の腸内にも存在することから、安全性は高いと考えられる。しかし、安全性に関する懸念は残っており、消化管上部の過酷な環境に耐えられるかどうか、小腸に存在する酸素中でも活性を維持できるかどうかは不明である。
質疑応答では、果糖の摂取が、プリン体を自然に分解する嫌気性細菌の機能を抑制する可能性があるかどうかという質問が出た。ドッド氏は、一部の炭水化物が一部の細菌株の尿酸分解を抑制することを、彼のグループが発見したと回答した。また、果糖の摂取量増加が腸内細菌による尿酸分解を抑制し、高尿酸血症の一因となる可能性は十分に考えられるが、さらなる研究が必要であると述べた。
別の参加者からは、抗生物質の使用が痛風のリスクと関連しているかどうか、抗生物質の使用後に血清尿酸値が上昇するかどうかという質問が出た。ドッド氏は、スタンフォード大学の医療記録のデータを後ろ向きに分析した結果、抗生物質の投与後に血清尿酸値に変化は見られなかったと回答した。しかし、その後抗生物質を投与された健康な人を対象とした食事制限試験では、尿酸値の大幅な上昇が見られたという。ただし、この試験では血漿サンプルは採取されていない。ドッド氏は、これは非常に良い質問であり、今後さらに調査を進めていきたいと述べた。
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by Jim Kling kl. www.medscape.com 11-18-2024
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