Kernekoncepter
本稿では、エンロンのEメールデータを用いて、ネットワーク分析と感情分析を行い、企業のコミュニケーションパターンと文化、そして経営危機との関連性を明らかにしようとしている。
Resumé
エンロンのEメールデータ分析
本稿は、2001年に経営破綻したアメリカのエネルギー会社エンロンのEメールデータを用い、ネットワーク分析と感情分析を行い、組織構造と企業文化を分析した研究論文である。
背景と先行研究
- エンロンは、1985年に設立された電力会社で、1990年代にインターネットを活用したビジネスモデルで急成長を遂げたが、2001年に不正会計が発覚し、破綻した。
- エンロンのEメールデータは、連邦エネルギー規制委員会(FERC)によって公開され、企業のコミュニケーション分析に活用されている。
- ネットワーク分析では、従業員をノード、Eメールのやり取りをリンクとして、組織内の情報の流れや影響力のある人物を分析する。
- 感情分析では、Eメールの文面から感情を数値化し、組織全体の感情の傾向や変化を分析する。
研究方法
- 本研究では、カーネギーメロン大学のWilliam Cohenが作成したエンロンのEメールデータ(517,431通のEメール、151人の従業員)を使用。
- ネットワーク分析には、Gephiを用いて、次数中心性、近接中心性、仲介中心性、固有ベクトル中心性、PageRankなどの指標を算出した。
- 感情分析には、PythonのTextBlobを用いて、各Eメールの感情値を算出し、時系列で感情の傾向を分析した。
結果
- 異なる中心性指標を用いることで、組織内における重要人物のランキングが異なることが明らかになった。
- Eメールのやり取りの頻度を変化させることで、ネットワーク構造や中心性指標に影響が出ることが明らかになった。
- コミュニティ検出の結果、エンロンでは、部署や役職などの公式な組織構造と類似したコミュニティが形成されていることが明らかになった。
- 感情分析の結果、組織全体の感情の傾向は時間とともに大きく変動しなかった。また、2000年10月と2001年10月の感情値を比較しても、有意な差は見られなかった。
考察
- 本研究の結果、エンロンでは、公式な組織構造と非公式なコミュニケーションネットワークが類似していることが示唆された。
- 感情分析の結果からは、経営危機が迫る中で、従業員の感情に大きな変化は見られなかった。これは、不正会計が組織全体に隠蔽されていたため、従業員が危機を認識していなかった可能性が考えられる。
今後の展望
- 今後の研究では、Eメールの内容分析や従業員へのインタビュー調査などを実施することで、エンロンの企業文化や組織構造、そして経営破綻との関連性をより深く分析する必要がある。
- また、本研究で開発したPythonモジュールを公開することで、他の研究者がエンロンのEメールデータを活用した分析を容易に行うことができるようになることが期待される。
Statistik
エンロンのEメールデータは、連邦エネルギー規制委員会(FERC)によって公開され、619,449通のEメールと158人の従業員の情報を含んでいる。
本研究では、カーネギーメロン大学のWilliam Cohenが作成したエンロンのEメールデータ(517,431通のEメール、151人の従業員)を使用。
2000年10月のEメールネットワークは、84のコンポーネントに分かれていた。
2001年10月のEメールネットワークは、72のコンポーネントに分かれていた。
2000年10月におけるEメールの最大送信数は、トレーダーのエリック・バス氏による44通だった。
2001年10月におけるEメールの最大送信数は、政府関係部門のエグゼクティブであるジェフ・ダソビッチ氏による89通だった。
2001年10月の平均感情値は、2000年10月の平均感情値よりも72%高く、P値は0.05未満だった。
Citater
"By analyzing the contents of the Enron e-mails, and how e-mails are passed around, we can get an understanding of the social structure of a company and can identify the influencers of that employee network."
"We find that the sentiment trend of the Enron e-mails does not reflect their financial troubles."
"Our results provide insight into how information flowed through Enron, who the key employees were, and e-mail sentiment before and after the crisis."