本症例は51歳女性の進行性の運動障害と認知機能低下を呈した症例である。患者は短期記憶の悪化と日常生活・仕事での計画・組織化の困難さを主訴に受診した。診察では四肢の不随意運動(chorea)が認められた。家族歴では母親の晩期に認知症と平衡障害、うつ、易怒性があった。
神経学的検査、画像検査、遺伝子検査の結果から、ハンチントン病と診断された。ハンチントン病は常染色体優性遺伝の神経変性疾患で、30-50歳代に運動障害、行動障害、認知機能低下を呈する。
本症例では、MRIで尾状核の萎縮が認められ、遺伝子検査でHTT遺伝子のCAG反復数が43回と異常高値であった。
治療としては、choreaに対してVMAT2阻害薬が処方され、精神症状に対して抗うつ薬や気分安定薬、抗精神病薬、心理療法などが行われた。さらに、理学療法、作業療法、言語療法、ソーシャルワークによる支援も行われた。
ハンチントン病は進行性の経過をたどり、発症から15-20年で完全介護状態に至り死亡に至る。本症例のように早期診断が重要で、遺伝カウンセリングや症状緩和治療、支援サービスの提供などが必要となる。現在、発症抑制や進行抑制を目的とした新しい治療法の開発が期待されている。
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