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脊髄損傷後の瘢痕形成は神経再生を阻害するため、その動的な調節が重要である。本研究は、ケイ-オピオイド受容体を発現する脳脊髄液接触ニューロンが、プロジニルフィンを産生する隣接細胞集団からのケイ-オピオイド刺激を受けて、上衣細胞の増殖を抑制する内因性のパラクライン伝達経路を明らかにした。
Tiivistelmä
本研究は、脊髄損傷後の瘢痕形成を調節する新たなメカニズムを明らかにした。
脊髄損傷後、哺乳類の脊髄は瘢痕を形成して損傷部位を封じ込め、さらなる損傷を防ぐ。しかし、過剰な瘢痕形成は神経再生と機能回復を阻害する。このジレンマから、瘢痕形成を動的に調節する治療法の開発が重要である。これまでの研究では、星状膠細胞に焦点が当てられてきたが、近年、上衣細胞もこの過程に関与することが示唆されている。
本研究では、上衣細胞の増殖を調節する内因性のメカニズムを解明した。具体的には以下の知見を得た:
上衣細胞の増殖を抑制するケイ-オピオイド受容体(OPRK1)を、機能未解明の脳脊髄液接触ニューロン(CSF-cN)が発現している。
CSF-cNに隣接する細胞集団がプロジニルフィン(PDYN)を産生しており、これがケイ-オピオイドリガンドとして機能する。
ケイ-オピオイドはCSF-cNを興奮させ、上衣細胞の増殖を抑制する。
ケイ-オピオイド受容体拮抗薬の全身投与は、CSF-cN依存的に上衣細胞の増殖を促進する。
ケイ-オピオイド受容体作動薬の投与は、上衣細胞の増殖、瘢痕形成、運動機能回復を抑制する。
以上より、PDYN+細胞からのケイ-オピオイド放出がCSF-cNを刺激し、上衣細胞の増殖を抑制するというパラクライン伝達経路が、脊髄損傷後の瘢痕形成を内因的に調節していることが明らかになった。この知見は、損傷後の瘢痕形成を動的に制御する新たな治療戦略につながる可能性がある。
Tilastot
脊髄損傷後の瘢痕形成は神経再生と機能回復を阻害する。
ケイ-オピオイド受容体拮抗薬の全身投与は、上衣細胞の増殖を促進する。
ケイ-オピオイド受容体作動薬の投与は、上衣細胞の増殖、瘢痕形成、運動機能回復を抑制する。
Lainaukset
PDYN+細胞からのケイ-オピオイド放出がCSF-cNを刺激し、上衣細胞の増殖を抑制する。
ケイ-オピオイド受容体拮抗薬の投与は、CSF-cN依存的に上衣細胞の増殖を促進する。