Concepts de base
本稿では、実数(無限ビット列)から実数への一方向関数の存在を計算可能性の観点から証明し、従来の文字列ベースの一方向関数の研究分野における未解決問題に新たな知見を提供しています。
Résumé
本稿は、Levin (2023) によって提起された、実数(無限ビット列)から実数への一方向関数の存在に関する未解決問題を、計算可能性の理論を用いて肯定的に証明した研究論文です。
論文の概要
- 従来の計算複雑性理論における重要な未解決問題の一つに、文字列から文字列への一方向関数の存在証明があります。これは、計算は容易だが逆関数の計算が困難な関数の存在を問う問題です。
- Levin (2023) は、この概念を実数(無限ビット列)の領域に拡張し、計算可能性の観点から一方向関数を定義し、その存在可能性を問いました。
- 本稿では、停止問題の困難性を用いることで、全域的で計算可能な一方向関数が存在することを証明し、Levin の問題に肯定的な回答を与えています。
主な結果
- 全域的で計算可能かつ一方向な関数の存在証明: 停止問題の困難性を用いることで、そのような関数を構成できることを示しました。
- 一方向関数の逆像の非単射性: 一方向関数の逆像は、その値域のほとんど至るところで非可算な完全集合となることを証明しました。
- 決定的な逆関数およびほとんど確実に逆関数を持つ関数の構成: 「ほぼ単射」な関数を構成し、それらの関数が決定的に、あるいはほとんど確実に逆関数を持つことを示しました。
本稿の意義
本稿は、実数上の計算可能性の理論を用いることで、従来の文字列ベースの一方向関数の研究分野における未解決問題に新たな知見を提供しています。特に、停止問題の困難性と一方向関数の存在を結びつけた点は、計算複雑性理論における重要な進展と言えるでしょう。