本研究では、等モル組成のNiCoFeCrGa高エントロピー合金を対象に、微小柱圧縮試験を通じて、材料の変形メカニズムの歪み速度依存性を明らかにした。
まず、急冷処理したサンプル(S1)では、FCC相とBCC相が共存する二相組織を有しており、それぞれの相の変形挙動が大きく異なることを示した。BCC相は極めて高い降伏応力を示すのに対し、FCC相は低い降伏応力と不安定な変形挙動(ジャーキーフロー)を示す。
次に、徐冷処理したサンプル(S2)では、BCC相中にCr rich な析出物が形成されるが、これらの析出物は変形中に切断されるため、かえってBCC相の強度を低下させることが明らかになった。
さらに、歪み速度依存性の解析から、103/s以上の高歪み速度域では、BCC相とFCC相の変形メカニズムが大きく変化することが分かった。BCC相では歪み速度感受性が大幅に増大するのに対し、FCC相ではそれほど顕著ではない。これは、BCC相の変形がドラッグ支配に遷移するのに対し、FCC相ではそうでないためと考えられる。
このように、本研究では高エントロピー合金の変形メカニズムの歪み速度依存性を微細力学的に解明し、その背景にある転位挙動の違いを明らかにした。
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