本研究では、乳がん細胞の進化過程において、まれな有利な「運転手」変異と頻繁な有害な「乗客」変異の相互作用を記述するタグ・オブ・ウォー・モデルを、モラン・モデルと分岐過程の2つのフレームワークで検討した。
まず、両モデルの長期的な振る舞いを、選択圧の強さの異なる3つのシナリオで比較した。その結果、変異頻度スペクトルなどの統計量が、モラン・モデルAと条件付き分岐過程で良く一致することが分かった。一方、モラン・モデルBでは、集団の適応度が時間とともに増加する傾向が見られた。
次に、3つの乳がん検体のデータにタグ・オブ・ウォー・モデルを当てはめて、選択係数を推定した。その結果、全ての検体で「乗客」変異の選択係数が0でない値を示し、「乗客」変異が腫瘍形成過程で有害な選択圧を及ぼしていることが支持された。
以上より、モラン・モデルAと条件付き分岐過程は、タグ・オブ・ウォー・モデルの振る舞いを良く捉えられることが示された。また、乳がん細胞の進化過程では、まれな「運転手」変異と頻繁な「乗客」変異の相互作用が重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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