Konsep Inti
ニュートリノ出現におけるCP対称性の破れは、大気ニュートリノ振動と太陽ニュートリノ振動のサブ振幅間の干渉によって生じるが、この干渉にはCP保存項とCP非保存項が存在する。本稿では、CP保存項がサブ振幅の定義の仕方によって変化することを示し、CP保存項を完全に排除することはできないものの、ニュートリノ消失確率において大気-太陽間のCP保存干渉項を持たないような、妥当なサブ振幅の定義が存在することを示す。
Abstrak
本稿は、3つのフレーバーを持つニュートリノ振動における、大気ニュートリノ振動と太陽ニュートリノ振動のサブ振幅間のCP保存(CPC)干渉について詳細に検討した研究論文である。
研究目的: ニュートリノ出現における振幅全体を、物理的に意味のある明確な方法で大気ニュートリノ振動と太陽ニュートリノ振動のサブ振幅に分割できるかどうか、あるいはこの分離方法に曖昧さが存在するかどうかを調査する。
方法: ニュートリノ振動の振幅式を新たな方法で記述し、大気ニュートリノ振動と太陽ニュートリノ振動のサブ振幅を定義する際の自由度を示す。また、標準的なニュートリノ混合行列を用いて、この自由度がどのように現れるかを具体的に示す。
主な結果:
- 振幅の一部を大気ニュートリノ振動のサブ振幅から太陽ニュートリノ振動のサブ振幅に移動させることができ、その逆も可能である。この操作は物理的に一意な方法ではなく、任意性を持つ。
- この任意性のため、大気ニュートリノ振動と太陽ニュートリノ振動のサブ振幅間のCPC干渉項も一意ではなく、この干渉項の一部を大気ニュートリノ振動セクター内のCPC干渉に移動させることができる。
- CPC干渉項を完全に排除することはできないが、サブ振幅を異なる方法で選択することで、干渉項を移動させることは可能である。
- νe消失チャネルにおいて、大気ニュートリノ振動と太陽ニュートリノ振動のサブ振幅間のCPC干渉項がキャンセルされるようにサブ振幅を選択することが可能である。
- νμ、ντ消失チャネルにおいても同様のキャンセルを実現することが可能である。
結論:
- ニュートリノ振動において一意に定義される干渉項はCP非保存(CPV)干渉項のみである。これは、この項が振幅のCP偶数部分とCP奇数部分間の干渉、すなわちU↔U*の交換の下での偶数と奇数の干渉としてのみ生じるためである。
- CPC干渉項は一意ではなく、サブ振幅の一部を大気ニュートリノ振動と太陽ニュートリノ振動のサブ振幅間で移動させることができるため、これらの項を分離する方法は複数存在する。
- したがって、全振動確率を一意に分離する方法は、CP偶数部分とCP奇数部分に分離することだけであり、CP奇数部分は全振動振幅のCP偶数部分とCP奇数部分間のCPV干渉からのみ生じる。
意義: 本研究は、ニュートリノ振動におけるCP対称性の破れの理解を深め、将来のニュートリノ実験におけるCPVの測定と解釈に重要な示唆を与えるものである。
今後の研究: 本研究で示されたCPC干渉項の任意性と、ニュートリノ消失チャネルにおけるキャンセル効果は、物質効果を含むより現実的なニュートリノ振動モデルにおいて、さらに検討する必要がある。