時間推定に関する安定した順次ダイナミクスは前頭前野の主観的時間推定を表す

Core Concepts

前頭前野の持続細胞の順次活動パターンは、個別の試行における時間推定の変動を反映し、正確な時間推定に重要な役割を果たしている。

Abstract

本研究では、ラットの前頭前野(mPFC)における時間表現のメカニズムを明らかにするため、in vivo カルシウムイメージングを用いて行動課題中のニューロン活動を記録した。その結果、以下の知見が得られた:

1. mPFC には、ある特定の時間点で選択的に活性化する「持続細胞」が存在し、これらの細胞の活動パターンが順次的に現れる。
2. この持続細胞の順次活動パターンは、個別の試行における時間長の変動に合わせて動的にスケーリングされ、正確な時間推定に寄与している。
3. 一方、時間の開始や終了を表す細胞は動的に変化するのに対し、持続細胞の順次活動パターンは数週間にわたって安定して維持されている。
4. 時間推定の誤りは主に、持続細胞の活動パターンのスケーリングエラーに起因することが示された。

これらの結果は、mPFCの持続細胞の順次活動パターンが、生理学的条件下での時間表現の主要なコーディング様式であることを示唆している。また、この時間表現に関与する特殊な細胞集団の同定が、時間認知のメカニズム解明につながると考えられる。

Stats

正しい試行と誤った試行の間で、持続細胞の活動パターンのスケーリングに有意な差がある。
持続細胞の活動パターンから予測した時間と実際の時間の誤差は、正しい試行と誤った試行で異なる傾向を示す。

Quotes

「持続細胞の順次活動パターンは、個別の試行における時間長の変動に合わせて動的にスケーリングされ、正確な時間推定に寄与している」
「時間推定の誤りは主に、持続細胞の活動パターンのスケーリングエラーに起因する」

Key Insights Distilled From

Stable sequential dynamics in prefrontal cortex represents subjective estimation of time

by Li,Y., Yin,W... at www.biorxiv.org 02-28-2024

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2024.02.26.582071v1

Deeper Inquiries

時間表現に関与する前頭前野の細胞集団の分子的特徴は何か

この研究によると、時間表現に関与する前頭前野の細胞集団の分子的特徴は、時間を表現するための安定したシーケンシャル活動パターンを持つことが示唆されています。特に、持続時間をコーディングする細胞（duration cells）は、特定の時間点での選択的な活性化を示し、その活動は総イベントの持続時間によってスケーリングされることが観察されました。さらに、これらのduration cellsの活動は、トライアル間で安定したシーケンシャルパターンを維持し、時間のスケーリングエラーに関連していることが示されました。将来の研究によって、時間をコーディングするこの細胞集団の分子的特徴が特定されることで、時間表現の神経メカニズムに重要な洞察が得られる可能性があります。

他の脳領域における時間表現メカニズムとの違いは何か

他の脳領域における時間表現メカニズムとの違いは、前頭前野における時間表現の安定性とスケーリング効果にあります。この研究では、前頭前野におけるduration cellsの活動パターンがトライアル間で安定しており、時間のスケーリングに関連していることが示されました。一方、過去の研究では、他の脳領域（例えば、海馬や皮質）におけるシーケンシャルパターンはセッション間で大きな変動を示すことが報告されています。このような安定性の違いは、前頭前野における時間表現の神経メカニズムが他の脳領域と異なる可能性があることを示唆しています。

時間表現の個体差や病態との関連性はどのように考えられるか

時間表現の個体差や病態との関連性は、前頭前野における時間コーディングの安定性やスケーリング効果によって影響を受ける可能性があります。個体差や病態によって、前頭前野のduration cellsの活動パターンや時間スケーリング能力が変化することで、時間表現における認知機能の異常や障害が引き起こされる可能性があります。また、前頭前野における時間表現の特性が個体差や病態とどのように関連しているかについては、さらなる研究が必要とされます。これにより、時間知覚の個体差や疾患に対する理解が深まり、将来的には個別化された治療法や介入法の開発につながる可能性があります。