Core Concepts
H3.3K27M変異とBMP2/7シグナルの相乗作用により、静止性かつ浸潤性の腫瘍細胞状態が誘導される。
Abstract
本研究では、ペディアトリック拡散性中間線グリオーマ(pDMG)における BMP シグナル経路の役割を包括的に解析しています。
まず、ACVR1 変異の有無に関わらず、pDMG 腫瘍において BMP シグナル経路が活性化されていることを示しました。この BMP 経路の活性化は、主に BMP2 と BMP7 の発現によって維持されていると考えられます。特に、BMP7 は発生期の脳の中間線構造で発現が高まり、pDMG 発症時期と一致することから、微小環境からの BMP シグナルが腫瘍細胞の変換に寄与する可能性が示唆されます。
次に、H3.3K27M 変異を有する小児グリオーマ細胞株を用いた実験から、BMP7 が H3.3K27M 変異と協調して、細胞周期の停止と浸潤性の亢進を誘導することが明らかになりました。さらに、pDMG 患者由来の3D スフェロイド実験では、BMP2 と BMP7 の相乗作用により、静止性かつ浸潤性の腫瘍細胞状態が誘発されることが示されました。
以上の結果から、H3.3K27M 変異と BMP シグナルの相互作用が、pDMG の悪性形質の獲得に重要な役割を果たしていることが示唆されます。この知見は、pDMG の治療標的を探る上で有用な情報を提供するものと考えられます。
Stats
BMP7 発現は H3.3K27M 変異導入により減少する。
H3.3K27M 変異細胞では、BMP7 処理により TGF-β/BMP シグナル経路の活性化が増強される。
H3.3K27M 変異細胞では、BMP7 処理により細胞周期関連遺伝子の発現が抑制される。
H3.3K27M 変異細胞では、BMP7 処理により p21 (CDKN1A) の発現が増加し、Rb のリン酸化が減少する。
H3.3K27M 変異細胞では、BMP7 処理により浸潤関連遺伝子(ITGA2、ROBO2、MMP28、COL28A1)の発現が増加する。
H3.3K27M 変異細胞では、BMP7 処理により浸潤能が増強される。
Quotes
"BMP7 は H3.3K27M 変異と協調して、細胞周期の停止と浸潤性の亢進を誘導する。"
"BMP2 と BMP7 の相乗作用により、静止性かつ浸潤性の腫瘍細胞状態が誘発される。"
"H3.3K27M 変異とBMPシグナルの相互作用が、pDMGの悪性形質の獲得に重要な役割を果たしている。"