核心概念
本稿では、複数偏波を用いた線形アレーアンテナの空間多重化能力を近距離場通信において考察し、送信側の偏波数によって最適な空間ストリーム数が変化することを示した。
要約
本稿は、複数偏波を用いた線形アレーアンテナの空間多重化能力を近距離場通信において考察した研究論文である。
論文情報: Mestre, X., Agustin, A., & Sardà, D. Available Degrees of Spatial Multiplexing of a Uniform Linear Array with Multiple Polarizations: a Holographic Perspective.
研究目的: 近距離場通信において、複数偏波を用いた線形アレーアンテナがサポート可能な空間ストリーム数を明らかにすること。
手法:
- 送信機に線形アレーアンテナ、受信機に単一のアンテナ素子を配置し、それぞれに3つの直交する微小ダイポールアンテナを備えたMIMOシステムを想定。
- ホログラフィックな近似を用い、アンテナ素子数を無限大、素子間距離を無限小に近づけ、開口長を一定とした。
- 送信機側で3つの偏波を用いる場合と2つの偏波を用いる場合について、それぞれ受信機の位置と信号対雑音比に応じた空間ストリーム数を導出。
主要な結果:
- 送信機側で3つの直交偏波を用いる場合、低い送信電力でもほぼ全領域で少なくとも2つの空間ストリームをサポートできる。
- 送信機側で2つの直交偏波を用いる場合、3つの空間ストリームをサポート可能な領域は限定されるものの、その領域は送信電力に応じて広がる。
結論:
- 複数偏波を用いた線形アレーアンテナの空間多重化能力は、送信側の偏波数によって異なる。
- 常に2つの空間ストリームを確保したい場合は3つの偏波を、3つの空間ストリームを広い領域で確保したい場合は2つの偏波を用いることが有効である。
本研究の意義:
- 近距離場通信におけるMIMOシステムの設計指針を示唆。
- 特に、ミリ波やテラヘルツ波などの高周波帯を用いた次世代無線通信システムへの応用が期待される。
限界と今後の研究:
- 本稿では微小ダイポールアンテナを仮定しており、現実的なアンテナパターンを用いた場合の評価が課題として残されている。
- また、本稿では単一の受信機のみを考慮しており、複数受信機が存在する場合の評価も今後の課題である。
統計
送信機側で3つの偏波を用いる場合、参照点の信号対雑音比が-5.82dB以上であれば、常に少なくとも2つの空間ストリームをサポートできる。