核心概念
アルゴリズムを使った価格協調は、明示的な脅威を使わなくても実現できる。価格設定アルゴリズムを先に導入した企業は、その後に参入する企業の行動を制限することで、高価格を維持できる。
要約
本論文は、企業間の価格競争において、明示的な脅威を使わなくても、アルゴリズムを使った価格協調が可能であることを示している。
まず、ベルトラン競争モデルとロジットモデルの2つの価格競争モデルを定義する。ベルトラン競争では、より安い価格を設定した企業が全需要を獲得し、同価格の場合は需要を均等に分け合う。ロジットモデルでは、価格差に応じて需要が分配される。
次に、この価格競争ゲームを繰り返し行う場合を考える。一方の企業(学習者)がno-regretアルゴリズムを使って価格を決定し、もう一方の企業(最適化者)がそれに対して最適に反応する場合を分析する。
その結果、以下のことが明らかになった:
最適化者は、学習者のアルゴリズムに対して、単純な固定価格戦略でも、ほぼ独占価格に近い収益を得られる。
一方、学習者も、最適化者の戦略に対して、ほぼ独占価格に近い収益を得られる。
実際、学習者がno-swap-regretアルゴリズムを使い、最適化者が固定価格戦略を使う、という組み合わせは、アルゴリズム空間でのナッシュ均衡を形成する。この均衡では、明示的な脅威は使われていないにもかかわらず、ほぼ独占価格が実現される。
つまり、アルゴリズムを使った価格設定は、明示的な脅威を必要とせずに、高価格を実現できることが示された。これは、従来の経済学の理解とは異なる結果である。
統計
最適化者は、学習者のno-regretアルゴリズムに対して、固定価格戦略で少なくともΩk(T)の収益を得られる。
学習者も、最適化者の戦略に対して、ほぼΩk(T)の収益を得られる。
引用
"To us economists, collusion is not simply a synonym of high prices but crucially involves "a reward-punishment scheme designed to provide the incentives for firms to consistently price above the competitive level" (Harrington 2018, p. 336). The reward-punishment scheme ensures that the supra-competitive outcomes may be obtained in equilibrium and do not result from a failure to optimize."
"This suggests that the definition of "algorithmic collusion" may need to be expanded, to include strategies without explicitly encoded threats."