核心概念
ポリテクニコ・ディ・トリノで開発中のネットワーク音楽パフォーマンスシステムMEVOを用いて、トリノ(イタリア)とヴロツワフ(ポーランド)の2都市間で行われた分散コンサートの実証実験について報告する。
要約
本論文では、ポリテクニコ・ディ・トリノで開発中のネットワーク音楽パフォーマンスシステムMEVOの使用例を紹介する。2023年6月に行われた分散コンサートでは、トリノとヴロツワフの2都市間で3人ずつの演奏者が参加した。
MEVOシステムは現在開発途上であるものの、遠隔観客にとってほぼ透過的な体験を提供できることが示された。
MEVOの主な特徴は以下の通り:
- ラズベリーパイ4Bとオーディオカードを使用したハードウェア構成
- Linux 6.1 PREEMPT RTを搭載したオペレーティングシステム
- Node.js 18.16で書かれた制御システム、C++17で書かれたメインプログラム
- PCMオーディオのキャプチャ、UDPパケット化、ピアツーピアでの送信、受信オーディオのバッファリングと再生を行う
分散コンサートの実験では、トリノとヴロツワフの両サイドでテレメトリデータを収集した。ラウンドトリップ時間は99.986%が59ms未満と安定しており、失われたオーディオフレームの割合はトリノ側で0.177%、ヴロツワフ側で0.131%と低かった。ミュージシャンと観客からの評価は良好で、MEVOシステムがほぼ透過的な体験を提供できることが示された。ただし、パケットロス対策やオーディオバッファの動的な調整などの改善の余地がある。
統計
ラウンドトリップ時間の最小値はトリノ側で51.985ms、ヴロツワフ側で52.011ms
ラウンドトリップ時間の99.986%が59ms未満
トリノ側の失われたオーディオフレームの割合は0.177%
ヴロツワフ側の失われたオーディオフレームの割合は0.131%
引用
"To guarantee a realistic musical interaction, ideally the M2E latency should be kept below 30 ms [1], though, depending on the musical piece and on the musicians' ability to apply delay-coping strategies, higher values may still be tolerated."
"Usually, latencies above 60ms lead to significant tempo deceleration, which degrades the musical performance [2]."