核心概念
BIER-TEをスケーラブルな大規模ネットワークに適用するための拡張アーキテクチャを提案し、その実装と性能評価を行った。
要約
本論文では、BIER-TEをスケーラブルな大規模ネットワークに適用するための拡張アーキテクチャを提案している。
BIER-TEは、IPマルチキャストパケットの転送にツリーエンジニアリング機能を追加したBIERの拡張版である。しかし、BIER-TEはBIERに比べてビットストリングのサイズが大きくなるため、大規模ネットワークでは適用が困難であった。
そこで本論文では、BIER-TEドメインをサブドメイン(サブセット)に分割し、サブドメイン間をトンネリングで接続する手法を提案した。各サブドメインではBIER-TEの通常の転送を行い、サブドメイン間のトンネリングにはMPLSを使用する。また、サブドメインのイングレスノードの障害に備えて、エグレス保護メカニズムを導入している。
さらに、P4とIntel Tofino ASICを使ってこの提案アーキテクチャを実装し、100Gbpsに近い高いスループットを実現できることを示した。ただし、パケット複製処理では性能が低下するため、既存のBIER高速化手法の適用が必要であることも明らかにした。
サブセットの選定アルゴリズムについては今後の課題として述べられている。
統計
BIER-TEヘッダーサイズが64ビットの場合、1536バイトのIPMCパケットに対して99Gbps以上の転送スループットが得られる
BIER-TEヘッダーサイズが256ビットの場合、1536バイトのIPMCパケットに対して96Gbps程度の転送スループットが得られる
64バイトのIPMCパケットの場合、BIER-TEヘッダーサイズが64ビットでも88Gbps、256ビットでは70Gbpsまでスループットが低下する