核心概念
並列処理環境では、無偏モンテカルロ推定量が有偏推定量に比べて完了時間の面で優位性を持つが、総計算コストの面では必ずしも有利ではない。
要約
本論文では、並列処理環境におけるモンテカルロ推定量の比較を行っている。具体的には、無偏のマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法と無偏のマルチレベルモンテカルロ(MLMC)法を、それぞれの有偏版と比較している。
まず、一般的な枠組みにおいて、無偏推定量と有偏推定量の総計算コストと完了時間を分析している。無偏推定量は完了時間の面で有利であり、その程度は推定量の実装時間の分布の裾の重さに依存する。一方、総計算コストの面では、無偏推定量と有偏推定量に大きな差はない。
次に、MLMC法の具体例を取り上げる。標準的なMLMC法、並列化したMLMC法、無偏のランダム化MLMC法の3つのアルゴリズムを比較している。標準MLMC法は総計算コストが最適だが完了時間は劣る。並列化MLMC法は完了時間が最も良いが総計算コストが最も悪い。一方、無偏ランダム化MLMC法は総計算コストが最適で、完了時間も標準MLMC法より良い。
さらに、無偏ランダム化MLMC法のバリエーションとして、バイアスを導入することで完了時間をさらに改善できることを示している。
以上の理論的な分析に加え、実装上の考慮事項についても議論している。