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リュウグウのニッケル同位体組成が明らかにする炭素質コンドライトの共通集積領域


核心概念
リュウグウとCIコンドライトは、他の炭素質コンドライトとは異なるニッケル同位体組成を示すが、これは、原始太陽系円盤の共通の領域で形成されたことを示唆している。
要約

リュウグウとCIコンドライトの起源に関する新たな知見

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隕石は、太陽系形成の初期段階における小惑星や微惑星の残骸であり、その起源や形成過程を探る上で重要な手がかりとなる。近年、日本の探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウのサンプルと、CIコンドライトと呼ばれる隕石グループの化学組成や同位体組成が非常に類似していることが明らかになった。しかし、鉄同位体組成など、他の炭素質コンドライトとは異なる特徴も確認されており、その起源については議論が続いていた。
本研究では、リュウグウ試料とCIコンドライトを含む様々な炭素質コンドライトのニッケル同位体組成を高精度で分析した。その結果、リュウグウとCIコンドライトは、他の炭素質コンドライトとは異なるニッケル同位体組成を示すことが明らかになった。具体的には、リュウグウとCIコンドライトは、他の炭素質コンドライトに比べて、μ60Ni61/58、μ62Ni61/58、μ64Ni61/58の値が大きいことがわかった。

深掘り質問

リュウグウやCIコンドライト以外の天体、例えば彗星や太陽系外縁天体のニッケル同位体組成を分析することで、太陽系形成初期の物質進化についてどのような情報が得られるだろうか?

彗星や太陽系外縁天体は、太陽系形成初期の物質を比較的変化させずに保持していると考えられています。これらの天体のニッケル同位体組成を分析することで、以下のような情報が得られる可能性があります。 太陽系形成初期の物質の空間的な不均一性: リュウグウやCIコンドライトは、他の炭素質コンドライトとは異なるニッケル同位体組成を示すことから、太陽系形成初期において物質が均一に分布していたわけではないことが示唆されます。彗星や太陽系外縁天体のニッケル同位体組成を分析することで、より広範囲における物質の空間的な不均一性を明らかにし、太陽系星雲内の物質混合や輸送過程の理解を深めることができます。 始原的な物質と天体形成の関係: 彗星や太陽系外縁天体のニッケル同位体組成を、隕石などの太陽系内天体と比較することで、それぞれの天体がどのような始原的な物質から形成されたのか、その起源や進化過程をより詳細に解明することができます。例えば、特定の同位体組成を持つ始原的物質が、特定の種類の天体の形成に大きく寄与していた可能性などが考えられます。 太陽系形成モデルの検証: 彗星や太陽系外縁天体のニッケル同位体組成は、太陽系形成モデルにおける物質進化の過程を反映していると考えられます。観測データに基づいて、太陽系形成モデルにおける物質の空間分布や同位体組成の進化を予測し、実際の観測データと比較することで、モデルの妥当性を検証し、より精度の高いモデル構築に貢献することができます。 特に、s過程元素である重ニッケル同位体(64Niなど)は、AGB星のような比較的低質量の星の進化段階で生成されると考えられています。一方、太陽系星雲内での物質進化もニッケル同位体組成に影響を与えると考えられます。これらの天体のニッケル同位体組成を分析することで、太陽系形成初期におけるAGB星からの物質供給や、太陽系星雲内での物質進化過程に関する情報を得ることができると期待されます。

もし、CIコンドライト/リュウグウが他の炭素質コンドライトと同じ領域で形成されたと仮定すると、どのようなメカニズムでFeNi金属粒子を効率的に集積できたのだろうか?

CIコンドライト/リュウグウが他の炭素質コンドライトと同じ領域で形成された場合、FeNi金属粒子を効率的に集積するためには、以下の様なメカニズムが考えられます。 ガス抵抗による分別集積: 太陽系星雲ガスの中で、微小なダストはガス抵抗の影響を強く受けますが、大きな粒子(この場合、FeNi金属粒子)はガス抵抗の影響を受けにくく、相対的に速く沈降していきます。CIコンドライト/リュウグウの母天体が形成される際、ガス抵抗による分別集積が起こり、周囲の微粒子よりも効率的にFeNi金属粒子を集積した可能性があります。 氷ダストへの付着: 太陽系星雲の低温領域では、水などの揮発性物質が氷として存在し、ダスト粒子と混ざり合っていました。FeNi金属粒子が氷ダスト表面に選択的に付着し、その後、氷ダストと共に集積することで、CIコンドライト/リュウグウ母天体にFeNi金属粒子が濃集した可能性があります。 局所的な乱流拡散: 太陽系星雲内には、原始惑星円盤の形成や重力不安定などによって、局所的な乱流が発生していた可能性があります。この乱流拡散によって、本来はガス抵抗の影響で拡散しやすいFeNi金属粒子が、CIコンドライト/リュウグウ母天体形成領域に運ばれ、効率的に集積された可能性があります。 これらのメカニズムは単独で働くだけでなく、複合的に作用した可能性もあります。いずれの場合も、CIコンドライト/リュウグウが他の炭素質コンドライトとは異なる特徴的な形成環境下にあったことを示唆しており、今後の研究による更なる解明が期待されます。

太陽系以外の惑星系においても、CIコンドライト/リュウグウのような特異な同位体組成を持つ天体が発見される可能性はあるのだろうか?また、その場合、どのような条件が揃う必要があるのだろうか?

太陽系以外の惑星系においても、CIコンドライト/リュウグウのような特異な同位体組成を持つ天体が発見される可能性は十分にあります。 その様な天体が形成されるためには、以下の様な条件が考えられます。 金属元素に富む原始惑星系円盤: CIコンドライト/リュウグウは他の炭素質コンドライトに比べてFeNi金属粒子に富むことから、これらの天体が形成された原始惑星系円盤は、金属元素の含有量が高い環境であったと考えられます。 円盤内での効率的な物質輸送: CIコンドライト/リュウグウの特異な同位体組成は、太陽系星雲内で形成場所の異なる物質が混合した結果である可能性があります。これは、円盤内で物質が効率的に輸送されるメカニズムが存在していたことを示唆しています。惑星系形成初期における原始惑星の影響や、円盤内の乱流などが考えられます。 後期段階における天体形成: CIコンドライト/リュウグウは、太陽系星雲の終焉期に近い時期に形成されたと考えられています。これは、ガス成分が減少した環境下で、ダスト成分が効率的に集積した結果である可能性があります。 これらの条件が揃うことで、太陽系以外の惑星系においても、CIコンドライト/リュウグウのような特異な同位体組成を持つ天体が形成される可能性があります。 実際に、近年では、系外惑星系の化学組成分析技術が進歩しており、いくつかの系外惑星大気中で、炭素や酸素などの元素の存在比が測定されています。今後、観測技術の更なる向上により、系外惑星や系外微惑星の同位体組成が分析可能になれば、CIコンドライト/リュウグウのような特異な同位体組成を持つ天体が、太陽系特有のものではなく、普遍的なものであるのかどうか、明らかになることが期待されます。
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