核心概念
歩行者軌跡予測手法の精度、特徴要件、計算効率を自動運転の要件に照らして評価し、今後の研究開発の方向性を示す。
要約
本研究では、自動運転システムに適用可能な歩行者軌跡予測手法の評価を行った。主な結果は以下の通り。
- 精度評価:
- Best-of-N評価では、AgentFormerとTrajectron++が最も高い精度を示した。
- 単一軌跡予測では、Trajectron++が最も正確な予測を行った。
- 定速モデル(CVM)は、単一軌跡予測において他の手法を上回る性能を示した。
- 特徴要件評価:
- 多くの手法は、過去8ステップの情報を十分に活用できていない。
- Y-Netと AgentFormerは、1ステップ目の情報のみでは精度が大幅に低下する。
- Trajectron++とSocial-Implicitは、2ステップ以上の情報でも高い精度を維持できる。
- 計算効率評価:
- Social-Implicitが最も高速な推論時間を示し、CVMに次ぐ効率性を持つ。
- Trajectron++は最も遅い推論時間を示すが、最高精度を達成している。
- 推論時間と精度の間には明確な相関関係は見られない。
以上の結果から、自動運転への適用を考えると、単一軌跡予測の精度と計算効率の両立が重要であり、Trajectron++やSocial-Implicitなどのグラフベースのアプローチが有望であると考えられる。一方で、静止状態や状態変化の予測など、さらなる課題も明らかになった。今後は、意図認識や環境情報の活用など、より高度な特徴の統合が必要とされる。
統計
歩行者の軌跡予測における平均変位誤差(ADE)は、定速モデル(CVM)が0.995mであるのに対し、Trajectron++は0.555mと最も低い。
最終変位誤差(FDE)は、CVMが1.141mに対し、Trajectron++が1.162mと最も低い。
推論時間の中央値は、CVMが0.15ms、Social-Implicitが1.69ms、Trajectron++が131.34msと大きな差がある。