核心概念
磁気単極子は、標準模型に組み込むことが可能であり、存在すれば電磁気法則や量子効果に関する重要な情報をもたらすと考えられるため、その探索は意義深い。
要約
磁気単極子:理論的展望と実証実験の可能性
本稿は、仮説上の粒子としての磁気単極子に関する理論的展望を提供し、その存在を実証するための実験の可能性について議論する。
古典電磁気学とディラック単極子
- 磁気単極子は、電荷と同様に、孤立した磁北極または磁南極として定義される。
- 古典電磁気学では、磁気単極子の存在は禁じられていないが、その存在を示唆する実験的証拠はない。
- ポール・ディラックは、電荷が量子化されている場合、量子力学は磁気単極子の存在と矛盾しないことを示した。
- ディラック単極子は、特異点を持つ磁場配置として記述され、その磁荷はディラック電荷の整数倍でなければならない。
磁気単極子の量子場理論
- 磁気単極子はその存在だけでなく、他の粒子との相互作用を記述するために、量子場理論が必要となる。
- 't ホフトとポリアコフは、特定の量子場理論において、場の方程式の準古典的な非線形解から生じる磁気単極子が存在することを発見した。
- これらの't ホフト-ポリアコフ単極子は準粒子であり、その質量はベクトルボソンの質量よりも大きい。
- 磁気単極子は、標準模型粒子と同様に、素粒子と考えることもできる。
磁気単極子の探索
- 磁気単極子の探索は、現在宇宙に存在する単極子を探すものと、実験で生成可能な粒子状態として存在するかどうかを検証するものに分けられる。
- これまでのところ、決定的な証拠は見つかっていない。
- 陽子-陽子衝突実験では、磁気単極子の生成は抑制されると考えられている。
- 重イオン衝突実験は、強い磁場を生成できるため、磁気単極子の探索に適している。
双対シュウィンガー過程
- 磁気単極子の生成には、摂動論を用いずに記述できる、双対シュウィンガー過程が考えられる。
- この過程は、強い磁場中での磁気単極子対の生成を記述する。
- LHCやマグネターなどの強い磁場環境における観測から、磁気単極子の質量の下限が得られている。
- 将来の加速器実験では、より重い磁気単極子の探索が可能になる可能性がある。
結論
- 磁気単極子は、標準模型に組み込むことが可能であり、存在すれば電磁気法則や量子効果に関する重要な情報をもたらすと考えられるため、その探索は意義深い。
- 今後の実験や理論的研究によって、磁気単極子の謎が解明されることが期待される。
統計
ディラック電荷は約20.7と電荷の基本単位に比べて非常に大きい。
't ホフト-ポリアコフ単極子の質量は、典型的な大統一理論では約10^17 GeVと予想される。
LHCの磁場強度は約10 Tである。
マグネターの磁場強度は最大で約10^11 Tである。
重イオン衝突実験で生成される磁場の強さは約10^16 Tである。
LHC Run 2の重イオン衝突実験では、約80 GeVまでの質量の磁気単極子が探索された。
将来の加速器実験では、1.5 TeV(Future Circular Collider)や150 TeV(月面衝突型加速器)までの質量の磁気単極子の探索が期待される。
引用
"The quantization of electricity is one of the most fundamental and striking features of atomic physics, and there seems to be no explanation for it apart from the theory of poles. This provides some grounds for believing in the existence of these poles.” - Paul Dirac (1948)
"This new development requires no change whatever in the formalism when expressed in terms of abstract symbols denoting states and observables, but is merely a generalisation of the possibilities of representation of these abstract symbols by wave functions and matrices. Under these circumstances one would be surprised if Nature had made no use of it.” - Paul Dirac (1931)