核心概念
ネットワークグラフの特異値分解を用いることで、社会的相互作用の相関構造の変化を捉え、政治的極端化の進行を定量的に評価できる。
要約
本研究では、ソーシャルメディアのユーザー間の相互作用を表すネットワークグラフを分析することで、政治的極端化の進行を定量的に評価する手法を提案している。
ネットワークグラフをランダム点積グラフ(RDPG)としてモデル化し、その最適埋め込み次元数の変化を追跡することで、社会的相互作用の相関構造の変化を捉えている。次元数の減少は、相関の増加、つまり政治的極端化の進行を示唆する。
この手法を、ニュージーランドのTwitterユーザーによる気候変動に関する議論、および国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)に関する議論のデータに適用した。その結果、両方のデータセットにおいて、時間とともに次元数が減少し、政治的極端化が進行していることが示された。
さらに、ブロックモデルを用いた合成データの分析から、グループ間の相互作用確率の低下や特定のグループの優位化が、ネットワークの次元数の減少、すなわち極端化につながることが明らかになった。
本手法は、従来の二極化検出手法とは異なり、政治的対立軸の特定を必要とせず、ネットワーク全体の相関構造の変化を捉えられるため、多党制の政治システムにも適用可能である。また、感情的極端化の捕捉など、さらなる発展の余地がある。
統計
ニュージーランドのTwitterデータ:
2017-2020年のネットワーク次元数は39.0、2020-2023年は27.0と減少している。
2017-2020年のネットワークエントロピーは0.980229、2020-2023年は0.97439と減少している。
COPデータ:
COP20からCOP26にかけて、ネットワーク次元数は14.0 -> 2.0 -> 2.0と減少している。
ネットワークエントロピーは0.9802473 -> 0.9754415と変動している。