核心概念
筋肉の運動単位プールの全体像を解明することで、運動ニューロンへの入力信号がどのように筋力に変換されるかが明らかになった。
要約
本研究では、ヒトの脛骨前筋と大腿直筋において、最大随意収縮の10~80%の範囲で、129±44個および130±63個の運動単位の発火活動を同時に記録・解析した。これは、これまでにない広範囲にわたる運動単位プールの活動を捉えたものである。
得られた主な知見は以下の通りである:
運動単位の発火率と筋力の関係は、ほとんどの運動単位で対数関数で特徴づけられた。これは、シナプス入力の増大に対して、運動ニューロンの発火率が初期に急激に増加し、その後緩やかな増加に移行することを示している。
低閾値運動単位では初期の発火率増加が大きく、高閾値運動単位では後期の発火率増加が大きい。これは、運動ニューロンのイオンチャネル特性の違いによるものと考えられる。
中閾値運動単位のみに、収縮時と弛緩時で発火閾値に差異(ヒステリシス)が見られた。これは、運動ニューロンの膜電位の双安定性に起因すると考えられる。
脛骨前筋の運動単位は大腿直筋のものに比べ、発火率の増加が大きかった。これは、両筋の運動ニューロンへの抑制性入力の違いによるものと推察される。
以上のように、本研究では、運動単位プール全体の発火率制御の詳細が明らかになった。これにより、運動ニューロンへの入力信号が筋力に変換される仕組みの理解が深まった。
統計
筋力の10%増加に対する発火率の増加は、脛骨前筋で3.5±1.7 pps、大腿直筋で2.0±1.1 ppsであった。
低閾値運動単位の初期発火率増加は、脛骨前筋で1.0±0.7 pps2、大腿直筋で0.6±0.6 pps2であった。
中閾値運動単位の発火閾値と脱離閾値の差は、脛骨前筋で-3.8±7.2 pps、大腿直筋で-3.1±6.0 ppsであった。
引用
"筋力の線形増加は、運動ニューロンが受け取る正味の興奮性シナプス入力の比例増加を反映すると仮定した。"
"発火率と筋力の関係は、ほとんどの運動単位で対数関数で特徴づけられた。"
"低閾値運動単位では初期の発火率増加が大きく、高閾値運動単位では後期の発火率増加が大きい。"