核心概念
痛みの表情は、痛みに関連する脳活動の独自の情報を伝えるものである。
要約
本研究では、健康な被験者に対して有害な熱刺激を与え、機能的MRI (fMRI)を用いて脳活動を記録した。Facial Action Coding System (FACS)を使用して痛みの表情を定量化し、既存の痛み関連の脳活動パターンとの関連を調べた。その結果、既存の痛み関連の脳活動パターンでは痛みの表情を予測できないことが示された。そのため、新たに「Facial Expression of Pain Signature (FEPS)」と呼ばれる、痛みの表情を予測できる脳活動パターンを開発した。
FEPSは、運動野、前頭極、後部頭頂葉、体性感覚野などの領域の活動を反映しており、痛みの感覚処理、情動処理、表情制御に関連していると考えられる。一方で、背外側前頭前野、腹外側前頭前野、中帯状皮質、亜回状皮質などの領域の活動は、痛みの表情を抑制する機能に関与していると示唆された。
FEPSは既存の痛み関連の脳活動パターンとは部分的に重複するものの、痛みの表情に特異的な情報を伝えることが明らかになった。これは、痛みの多様な現れ方を理解するためには、痛みの表情に関する脳活動の特徴を捉えることが重要であることを示唆している。
統計
痛み刺激時の FACS 複合スコアと NPS、SIIPS-1、PVP、TPAS との相関は有意ではなかった (r = 0.06、0.05、0.02、0.07)。
FEPS は FACS 複合スコアを有意に予測できた (平均 cross-validated Pearson's r = 0.54、R2 = 0.22、RMSE = 0.99)。
FEPS は痛み刺激時に有意に高い値を示し、特に表情反応のあった試行で高い値を示した。一方、無表情の痛み試行と温熱刺激時では FEPS 値に差はなかった。
引用
「痛みの表情は、上行性の侵害受容信号の処理、行動方針の決定、表情運動出力の制御に関与する分散した脳ネットワークの統合を反映している」
「痛みの表情に関する脳活動パターンは、痛みの経験に関する特定の表出を予測するための独自の情報を提供する」