核心概念
外部磁場の方向を変えることで、平面構造のスピントロニクスエミッタからのTHz信号の強度を効果的に制御できる。
本稿は、標準的なコバルト-プラチナ二層膜を用いたスピントロニクスTHzエミッタからのTHz信号強度を、外部磁場を用いて制御する新しいメカニズムを提案する研究論文である。
研究の背景
近年、ナノメートルスケールの強磁性層(FM)と非磁性層(NM)からなるナノ構造に基づくTHz放射源が注目を集めている。特に、FM/NMの二層構造は、半導体ベースのTHzエミッタに匹敵する広帯域THzエミッタとして機能することが多くの研究で示されている。さらに、この構造では磁場によってTHz放射を操作できるという利点がある。
研究内容
本研究では、コバルト-プラチナ二層膜にサブ波長周期の格子をエッチングし、THzアンテナとして機能させることを提案する。この格子に対して垂直または平行に磁場を印加することで、THz波の振幅を高い変調度で変調できる。
実験方法
マグネトロンスパッタ法を用いて、石英基板上にCo(2nm)/Pt(2nm)二層膜を作製した。
光リソグラフィーにより、二層膜全体にサブ波長周期(4, 50, 100, 300, 500, 1000µm)の格子をエッチングした。
THz時間領域分光法を用いて、THz放射の測定を行った。
サンプルは、最大2kOeの外部磁場中に設置し、磁場の方向を格子に対して垂直または平行に変化させた。
結果
格子の周期が大きい場合(1000, 500, 300 nm)、磁場を格子に対して回転させてもTHz信号強度は変化しなかった。
格子の周期が小さい場合(4nm)、磁場を格子に対して垂直方向から平行方向に90度回転させると、THz信号強度は27分の1に減少した。
ストライプ幅が2µmの場合、THz信号強度の比は約27となり、従来の構造よりも高い変調度が得られた。
考察
ストライプに垂直に磁化された場合、ISHEによって生じる電流はストライプに沿って流れ、THz信号が効率的に放射される。
ストライプに平行に磁化された場合、ISHEによって生じる電流はストライプに垂直に流れ、電荷蓄積が発生するため、THz信号強度が減少する。
結論
本研究では、平面構造のスピントロニクスエミッタからのTHz信号強度を、外部磁場の方向を変えることで効果的に制御できることを示した。この技術は、THz通信やTHzイメージングなどの分野における新しいTHzデバイスの開発につながる可能性がある。
統計
ストライプ幅が2µmの場合、THz信号強度の比は約27倍。
格子の周期が4nmの場合、磁場を格子に対して垂直方向から平行方向に90度回転させると、THz信号強度は27分の1に減少。
ストライプ幅が大きくなると、THz信号強度の比は減少する。
ストライプ間の距離がストライプ幅と同程度でない限り、THz信号強度の比はストライプ間の距離にほとんど影響されない。