核心概念
本稿では、複数の質量要素を連結した共振質量検出器を用い、中性子星合体から放出されるkHz帯の重力子を検出する新しい手法を提案する。
要約
本論文は、多モード共振質量検出器を用いて、中性子星合体から放出されるkHz周波数の重力子を直接検出する新しい手法を提案するものです。この検出器は、質量が徐々に減少する一連の質量要素で構成されており、最大要素はトン規模、最小要素はピコグラム規模です。
論文では、この多モード検出器の各要素が、最大質量要素の重力波への結合強度を維持しながら、最小質量要素に匹敵する有効質量しか持たない固有モードを持つことを示しています。これにより、固有モードは、トン規模の最大質量要素からの重力子吸収率を維持しながら、原理的にはピコグラム規模よりも小さい質量要素のエネルギー測定によって、単一重力子吸収過程を分解することができます。
この手法は、従来の共振質量検出器が抱えていた、大規模な機械的振動子の単一エネルギー量子(フォノン)の測定が困難であるという問題を克服するものです。従来の検出器では、最大でマイクログラム規模の機械的共振器しか実現されていませんでした。
論文では、最小質量要素のエネルギー測定に、光機械的手法を用いることを提案しています。この手法では、電磁キャビティを最小質量要素の位置に結合させます。固有モード分離により、電磁放射を最小質量要素に結合させることで、各固有モードにおける単一フォノン遷移を測定することができます。
この手法は、重力波の検出に新たな可能性をもたらすものであり、中性子星合体の後期の残骸や、高温の核の状態方程式に関する情報を得るために役立つ可能性があります。
統計
中性子星合体からの重力波の周波数は、kHzオーダーに達すると予想される。
提案する検出器は、最大でトン規模の質量要素と、ピコグラム規模の最小質量要素からなる。
検出器の目標とするQ値は10^9、動作温度は10 mKである。
これらの条件下では、熱フォノンによる励起確率は、0.5秒間の観測時間でP ≈ 0.6未満となる。
引用
"This allows the normal modes to have graviton absorption rates due to the tonne-scale largest mass, while the single graviton absorption process in the normal mode could be resolved through energy measurements of a mass-element in-principle smaller than pico-gram scale."
"In analogy with early signatures of photons in the photo-electric effect [72], this indicates that the field should consist of discrete ℏν packets of energy (gravitons) for a consistent explanation (an explanation which doesn’t violate energy conservation)."