核心概念
この論文では、フェルミオンの質量階層性と強いCP問題の解決を同時に目指す、パリティ不変の左右対称モデル(LRSM)に基づく新しいモデルを提案しています。
要約
放射質量機構:フレーバー階層性と強いCP問題への新たなアプローチ
この論文は、素粒子物理学における標準模型(SM)の未解決問題である、フェルミオンの質量階層性と強いCP問題に焦点を当てています。
質量階層問題
SMでは、フェルミオンの質量が大きく異なる理由が説明できません。例えば、トップクォークの質量はアップクォークの約40,000倍にもなります。この質量階層性を説明するために、様々な理論が提案されていますが、決定的なものはありません。
強いCP問題
強いCP問題は、量子色力学(QCD)におけるCP対称性の破れの謎に焦点を当てています。理論的には、強い相互作用においてCP対称性を破る項が存在する可能性がありますが、実験的にはそのような兆候は観測されていません。
この論文では、パリティ不変なLRSMに基づく新しいモデルを提案し、上記の2つの問題を同時に解決しようと試みています。
モデルの詳細
新しいフレーバー非普遍ゲージ対称性GF(U(1)2-3対称性)を導入し、フェルミオンの放射質量生成機構を実現しています。
各荷電フェルミオンに対して、機構に不可欠なベクトル型フェルミオンの追加世代を追加しています。
この設定により、第3世代のSMフェルミオンのツリーレベルのシーソー質量が生成されます。
第1世代と第2世代のフェルミオンの質量は、ゲージ補正を通じて1ループおよび2ループレベルで生成されます。
モデルの特徴
Yukawa結合の値をO(1)にすることができます。
LXゲージ補正のみではパリティ対称性は破れず、誘起される強いCP位相は摂動論のすべての次数で消失します。
スカラー誘起補正は、ゼロでない強いCP位相θ¯に寄与し、2ループレベルでは10^-14のオーダーと推定されます。
フレーバー対称性の破れのスケールとSU(2)R対称性(パリティ)の破れのスケールは、同程度であることが示唆されています。
新しいフレーバー付きゲージ相互作用の非普遍性により、クォークセクターとレプトンセクターの両方で様々なフレーバー変化遷移が生じ、現象論的に興味深い兆候が得られます。