本論文は、大統一理論 (GUT) の普遍的な帰結であるヒッグス二重項のカラー三重項パートナー (T粒子) が、TeV 領域の質量を持つ可能性と、その場合に期待される現象論について議論している。
GUT では、標準模型 (SM) のゲージ群がより大きなゲージ群に埋め込まれ、高エネルギーでは統一される。最小の GUT である SU(5) モデルでは、SM のフェルミオンは、5̄ 表現と 10 表現に割り当てられる。ヒッグス場は 5 表現に属し、その中には SM のヒッグス二重項 (H) とともに、カラー三重項 (T) が含まれる。
GUT 対称性の下では、T粒子と H は同じ結合定数でクォークやレプトンと相互作用するため、T粒子は陽子崩壊などのバリオン数非保存過程を媒介する。陽子崩壊の実験的な制限を満たすためには、T粒子の質量は GUT スケール (∼1015-16 GeV) 程度と非常に大きくなくてはならない。これは、電弱スケール (∼100 GeV) 程度の質量を持つ H との大きな質量差となり、「二重項-三重項質量分裂問題」として知られる。
従来のシナリオでは、T粒子の質量を大きくすることで陽子崩壊の抑制を試みてきた。しかし、Dvali らによって提唱された alternative なシナリオでは、T粒子の質量ではなく、結合定数 を抑制することで陽子崩壊の制限を回避できることが示された。
このシナリオでは、GUT 対称性の破れに伴い、高次元演算子を通じて T粒子の結合定数が大きく抑制される。その結果、T粒子は TeV 領域の質量を持ちながらも、陽子崩壊の制限を回避できる。
軽い T粒子は、LHC などの加速器実験で直接生成される可能性がある。また、陽子崩壊や中性子-ステライルニュートリノ振動など、低エネルギー実験でもその痕跡を観測できる可能性がある。
本論文では、特に中性子-ステライルニュートリノ振動に焦点を当て、T粒子が媒介する陽子崩壊と中性子振動の相関関係について議論している。陽子崩壊の制限を満たすためには、T粒子とステライルニュートリノの結合定数は非常に小さくなくてはならない。その結果、中性子-ステライルニュートリノ振動の振動時間も長くなるが、それでも現在の低エネルギー実験で探索可能な範囲内にある。
ヒッグスのカラー三重項パートナー (T粒子) は、GUT の検証、ニュートリノ質量の起源の解明、そして新しい物理法則の発見につながる可能性を秘めている。今後、LHC や低エネルギー実験による探索が進むことで、T粒子の存在が明らかになり、宇宙のより深い理解につながることが期待される。
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