核心概念
Sox9は角膜幹細胞を示す遺伝子であり、その発現の減少が角膜上皮の非対称な細胞運命の切り替えに必要不可欠である。
要約
本研究では、角膜上皮の幹細胞と前駆細胞の運命決定メカニズムを解明するため、in vivo細胞周期レポーターマウスを用いて単一細胞トランスクリプトーム解析を行った。その結果、Sox9が角膜幹細胞に特異的に高発現しており、Sox9欠損により角膜上皮の過増殖と扁平上皮化生が引き起こされることが明らかになった。
具体的には以下の知見が得られた:
角膜幹細胞(LSC)と前駆細胞(TAC)を含む増殖性基底細胞集団を単離し、単一細胞トランスクリプトーム解析を行った。その結果、LSCでは Sox9が高発現していることが明らかになった。
Sox9発現レポーターマウスを用いた in vivo追跡実験から、Sox9は長期的な角膜幹細胞の維持に必要であることが示された。
Sox9条件的ノックアウトマウスでは、角膜上皮の過増殖と扁平上皮化生が観察された。これは、Sox9欠失によりTACの非対称分裂が阻害され、対称分裂が持続することで引き起こされたと考えられる。
実験的にTACの分化を抑制すると、Sox9欠失と同様の角膜上皮の過増殖と扁平上皮化生が誘発された。
以上の結果から、Sox9は角膜幹細胞の維持と前駆細胞の非対称分裂の切り替えに重要な役割を果たすことが明らかになった。この知見は、角膜上皮の恒常性維持機構の理解と、角膜疾患の新たな治療法開発につながると期待される。
統計
角膜上皮の厚さは、Sox9欠損マウスの中心角膜と縁取り部で有意に増加していた。
Sox9欠損マウスの角膜上皮の約3分の1で、中心部の上皮と間質の肥厚が中等度から高度であった。
引用
「Sox9は角膜幹細胞を示す遺伝子であり、その発現の減少が角膜上皮の非対称な細胞運命の切り替えに必要不可欠である」
「Sox9欠失により角膜上皮の過増殖と扁平上皮化生が引き起こされた」
「TACの分化を抑制すると、Sox9欠失と同様の角膜上皮の過増殖と扁平上皮化生が誘発された」