核心概念
インドネシア・ジュパラの木製家具産業は、柔軟な専門化、独特の空間構造、保守的な社会価値観の組み合わせにより、アップグレードすることなく外部からの衝撃や世界的な競争の激化に耐えてきた。
要約
インドネシア・ジュパラの木製家具産業に関する研究論文のサマリー
書誌情報
Birgi, J. (2022). The role of spatial structures and social values in shaping local productive systems - New lessons from the wood-furniture cluster of Jepara, Indonesia. (Doctoral dissertation, Sorbonne-Paris-Cité University, Paris, France).
研究目的
本研究は、インドネシア・ジュパラの木製家具産業が、アップグレードすることなく、いかにして外部からの衝撃や世界的な競争の激化に耐えてきたのかを、空間構造と社会価値の観点から明らかにすることを目的とする。
方法論
本研究では、ジュパラの家具産業の中心地であるタフナン村を事例研究として、質的な分析手法を用いた。具体的には、148人の関係者へのインタビュー、1,633の事業所の空間分布分析、歴史データや統計データの分析などを行った。
主な結果
- ジュパラの家具産業は、15世紀に遡る長い歴史を持ち、その歴史の中で独特の空間構造と社会価値観が形成されてきた。
- 生産システムは、仲介業者、起業家、職人など、多数の小規模事業者が柔軟なネットワークを形成することで特徴付けられる。
- この柔軟性は、価格競争力と市場の変化への対応力を高める一方で、品質向上のための投資を阻害する要因ともなっている。
- 空間的には、道路網に沿って住宅と工房が混在する「樹状」構造を形成しており、土地利用の柔軟性と環境資源の保全を両立させている。
- 社会的には、個人主義、物質主義、運命論といった価値観が、起業家精神と労働力の柔軟性を支えている。
- 一方で、保守的な社会規範や相互扶助の精神が、経済的な不安定さを緩和する役割を果たしている。
主な結論
ジュパラの家具産業は、柔軟な専門化、独特の空間構造、保守的な社会価値観の組み合わせにより、アップグレードすることなく外部からの衝撃や世界的な競争の激化に耐えてきた。この「ローロード」型の発展モデルは、所得水準は低いものの、雇用創出効果が高く、地域社会の安定に貢献している。
意義
本研究は、従来の産業地区論やクラスター論では十分に説明できなかった、途上国におけるローロード型の産業集積のメカニズムを明らかにした点で意義深い。
制約と今後の研究
本研究は、単一の村を対象とした事例研究であるため、その一般化可能性には限界がある。今後は、他の地域や産業との比較分析を通じて、本研究の知見を検証していく必要がある。
統計
ジュパラの人口増加率は、1995年から2021年にかけて、州都スマランや州平均を上回っている。
ジュパラの家具産業における輸出額は、1991年から1999年にかけて年率63%増加したが、2000年から2001年にかけて63%減少した。
ジュパラの家具産業における人件費は、売上の25%を占めている。
ジュパラの家具産業の売上高100ドルのうち、51ドルは地元の関係者に分配されている。
引用
"they copy my ideas so much that I can see my own products on sale off the road before I could even find a way to market them myself. But I can do nothing against this, it will happen anyway"
“[he] can get orders, it should be fine”