本稿は、学生ローンにおける資金調達手段の多様化が学生、ひいては経済全体に及ぼす影響を考察している。
従来の学生ローンは、固定返済型の信用市場型融資(CML)が主流であった。しかし、CMLは返済額が固定されているため、将来の収入が不確実な学生、特に経済的に恵まれない学生にとってリスクが高い。このため、能力の高い学生でも高等教育への進学を断念せざるを得ないケースも少なくなかった。
この問題を解決するため、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、スウェーデン、イギリスなど、いくつかの国では、収入連動型返済方式(ICL)を導入した。ICLは、将来の収入に応じて返済額が変動する仕組みである。高所得者はより多くの返済を行い、低所得者は少ない返済で済むため、リスク分散効果が期待できる。
本稿では、学生がCMLとICLを自由に組み合わせることができる「ポートフォリオ制度(PR)」を提案している。PRでは、学生は自身の経済状況やリスク許容度に応じて、最適な資金調達方法を選択することができる。
分析の結果、PRは学生と経済全体に以下のメリットをもたらすことが示された。
本稿は、学生ローンにおけるポートフォリオ選択の重要性を示唆している。政府は、学生がCMLとICLを自由に選択できるような制度設計を行うことで、学生の経済的負担を軽減し、高等教育の機会均等を実現できる可能性がある。
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