核心概念
本稿では、量子情報処理のためのスケーラブルなプラットフォームとして期待される、シリコンカーバイドを用いた自立型フォトニックデバイスのウェハスケールでの製造方法について報告する。
要約
シリコンカーバイドを用いた自立型フォトニックデバイスのウェハスケール集積化:量子情報処理に向けたブレークスルー
本論文は、量子情報処理(QIP)ハードウェアの大規模化に向けた重要な進歩である、バルク4H-SiCにおける自立型フォトニックデバイスのウェハスケール製造プロセスについて報告している。
量子ネットワーク、コンピューティング、センシングなどの分野において、量子ナノフォトニクスの中核となる色中心プラットフォームは、その実現に向けた大きな可能性を秘めている。
しかし、量子エミッターの特性を維持しながら、フォトニックデバイスを大規模に集積化することが困難であるため、この技術の大規模展開は進んでいない。
この課題を克服するために、市販のウェハスケール基板として入手可能でありながら、優れた光学的およびスピン特性を持つ色中心のホストとしても機能する、シリコンカーバイド(SiC)に注目が集まっている。
本研究では、反応性イオンビームエッチング(RIBE)を用いて、バルク4H-SiCに三角形断面の自立型フォトニックデバイスを作製する、新しいウェハスケール製造プロセスを開発した。
このプロセスは、イオンビームを傾斜させてニッケルハードマスク層の下にエッチングすることで、様々な角度でアンダーカットを実現する。
5インチウェハを用いた実験では、エッチングレートとエッチング角度のばらつきはそれぞれ5.4%と2.9%であり、ウェハスケールでの均一性が実証された。
さらに、作製したフォトニック構造に集積化された色中心は、エッチング後も光学的特性を維持しており、量子グレードのシリコンカーバイドにおけるウェハスケールナノ加工の目標を達成している。