核心概念
本稿では、強化学習とプログラム合成を用いて、現実の量子ハードウェアに適した効率的な量子回路を自動的に構築する新しい手法、ガジェット強化学習(GRL)を提案する。
要約
量子回路学習における新しいアプローチ:ガジェット強化学習(GRL)
本稿では、強化学習とプログラム合成を用いて、現実の量子ハードウェアに適した効率的な量子回路を自動的に構築する新しい手法、ガジェット強化学習(GRL)を提案している。
量子コンピューティングは近年著しい進歩を遂げているが、実用的なアプリケーションへの適用には依然として大きな障壁が存在する。その一つが、量子回路の設計の難しさである。量子回路は、量子ビットに対する一連の操作を記述したものであり、量子アルゴリズムを実行するために不可欠な要素である。しかし、量子ビットの状態空間は指数関数的に大きくなるため、最適な量子回路を見つけることは非常に困難である。
従来の量子回路設計手法は、主に人間の専門家の知識や経験に頼っていた。しかし、量子コンピュータの規模が大きくなり、複雑化するにつれて、このアプローチは限界に達しつつある。そこで、近年注目されているのが、機械学習を用いて量子回路を自動的に設計する手法である。
GRLは、強化学習エージェントとプログラム合成アルゴリズムを組み合わせることで、効率的な量子回路を自動的に構築する手法である。
強化学習エージェント
強化学習エージェントは、量子回路の構築プロセスを、状態、行動、報酬からなる逐次的な意思決定問題として捉える。エージェントは、現在の量子回路の状態を観測し、次に実行する量子ゲート(行動)を選択する。そして、選択した行動によって得られた新しい量子回路の状態と報酬に基づいて、方策を更新していく。
プログラム合成アルゴリズム
プログラム合成アルゴリズムは、強化学習エージェントによって構築された量子回路を分析し、有用なゲート列(ガジェット)を抽出する。ガジェットは、特定の量子演算を実現するための効率的な回路パターンとみなすことができる。
GRLの動作原理
GRLは、まず、簡単な量子問題を解くことから始める。強化学習エージェントは、初期状態として与えられた量子回路から出発し、報酬を最大化するように量子ゲートを順次追加していく。このプロセスを繰り返すことで、エージェントは、簡単な量子問題を解くための効率的な量子回路を学習する。
次に、プログラム合成アルゴリズムを用いて、学習された量子回路から有用なガジェットを抽出する。抽出したガジェットは、強化学習エージェントの行動空間に追加される。
最後に、GRLは、より難しい量子問題を解くために、拡張された行動空間を用いて強化学習を再度実行する。このプロセスを繰り返すことで、GRLは、複雑な量子問題を解くための効率的な量子回路を自動的に構築することができる。