核心概念
本稿では、グラフ状態と安定化状態の局所ユニタリ (LU) 同値性を検証するアルゴリズムを提案し、そのアルゴリズムを用いて、最大 n = 11 量子ビットまでの安定化状態の LU 同値軌道と局所クリフォード (LC) 同値軌道が同一であることを数値的に確認しました。
要約
論文概要
本論文は、グラフ状態と安定化状態の局所ユニタリ (LU) 同値性を検証する新しいアルゴリズムを提案する研究論文です。
研究の背景と目的
- 安定化状態は、量子コンピュータ上で効率的に実装できるため、様々な量子タスクにおいて重要なリソースとなっています。
- 安定化状態の重要なサブクラスとして、グラフ状態があります。グラフ状態は、量子ビットに対応する頂点と、制御された2量子ビット演算に対応する辺を持つグラフによって視覚的に表現できます。
- グラフ状態と安定化状態の両方において、局所クリフォード (LC) 演算は、耐故障性があり実装が容易なため、重要な操作クラスとなっています。
- 従来、安定化状態に対するすべての局所ユニタリ (LU) 変換は、LC 演算によって実装できると考えられてきました。この仮説は、「LU=LC」予想として知られており、安定化状態のエンタングルメント構造に関する重要な未解決問題となっています。
- 本研究では、任意の2つの安定化状態間の LU 同値性を検証するアルゴリズムを提供することを目的としています。
提案手法
- 任意の安定化状態は、LC 同値なグラフ状態に変換できるため、問題はグラフ状態間の LU 同値性の判定に帰着できます。
- 提案アルゴリズムは、2つの入力グラフ G と G' に対して、対応するグラフ状態 |G⟩ と |G'⟩ 間の LU 同値性の有無を判定し、LU 同値である場合はその具体的な形式を出力します。
- アルゴリズムは2つのパートに分かれています。
- パートIでは、|G⟩ と |G'⟩ 間の LU 同値性のための必要条件をチェックします。これらの条件が満たされない場合、アルゴリズムは直ちに NO を出力します。
- パートIIでは、各要素 F ∈ FM に対して、アルゴリズムは、F と互換性のある任意のグラフ G と G' に関連付けられたグラフ状態間の LU 同値性の一般的な形式を見つける問題を、モジュラー演算における線形連立方程式を解く問題に還元します。
- このシステムに解があれば、それは |G⟩ と |G'⟩ 間の LU 同値性に対応します。そうでない場合、F と互換性のある LU 同値性はありません。すべての F に対して互換性のある LU 同値性が見つからない場合、状態 |G⟩ と |G'⟩ は LU 同値ではなく、アルゴリズムは NO を出力します。
実験結果
- 既存のライブラリを用いて、最大 n = 11 量子ビットまでの安定化状態の LU 同値軌道と LC 同値軌道の数が同一であることを数値的に確認しました。
結論と今後の展望
- 本稿では、グラフ状態と安定化状態の LU 同値性を検証するアルゴリズムを提案しました。
- 提案アルゴリズムは、グラフ状態と安定化状態の LU 同値性に関する理解を深め、量子コンピューティングにおける耐故障性のある量子情報処理の実現に貢献することが期待されます。
- 今後の課題としては、アルゴリズムの計算量を厳密に解析することや、より大規模な量子ビット系への適用可能性を検討することが挙げられます。
引用
「安定化状態に対するすべての局所ユニタリ (LU) 変換は、LC 演算によって実装できる」