本論文は、磁気トンネル接合(MTJ)を用いてトフォリゲートを構築するための新しい手法を提案し、その実現可能性を数値シミュレーションによって検証したものです。トフォリゲートは、任意のブール回路を構築できる可逆的な論理ゲートであり、従来のコンピュータとは異なる新しい計算技術の開発において重要な役割を担っています。
MTJは、長期記憶素子や磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)の開発に利用されてきましたが、近年では、その確率的な挙動と動的な性質から、データストレージを超えた新しいコンピューティングアプリケーションへの応用が期待されています。特に、ニューロモーフィックコンピューティングや最適化問題の解決などへの応用が注目されています。
本研究では、7つの結合した単一磁区強磁性体を用いて古典的なトフォリゲートを構築する手法を提案しています。各磁区は、垂直磁化MTJの自由層を表すものとしてモデル化され、マクロスピン近似を用いてシミュレーションが行われています。
シミュレーションの結果、異方性磁気エネルギーと交換結合エネルギーの比率(HA/Hex)がスピンのダイナミクスに大きな影響を与えることが明らかになりました。ゼロ温度でのLLGダイナミクスでは、HA/Hex ≲ 0.93 の場合に、常にトフォリゲートの真理値表と一致する構成が得られました。さらに、熱アニーリングを導入することで、この比率をHA/Hex ≃ 3.0まで高めることができ、100%の成功率を維持することができました。
本研究は、相互作用する古典的なマクロスピンから可逆的なユニバーサルゲートを構築できることを示しており、相互作用するMTJの配列を用いた新しいタイプの回路設計の可能性を示唆しています。今後の研究では、複数のトフォリゲートを用いた回路構築の実現可能性や、実際の計算タスクへの応用について検討していく必要があります。
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