核心概念
アイルランドと北アイルランドの全島電力系統(AIPS)における実際の大規模低慣性電力系統の事例を通して、過渡安定性、周波数安定性、電圧安定性の評価を行った。その結果、現時点では周波数安定性、特に周波数変化率(RoCoF)が主要な制約となっていることが明らかになった。
要約
本論文は、アイルランドと北アイルランドの全島電力系統(AIPS)における実際の大規模低慣性電力系統の事例を通して、過渡安定性、周波数安定性、電圧安定性の評価を行っている。
まず、系統運用者であるEirGridとSONIが動的安定性を管理するための運用制約と、リアルタイムの安定性評価ツールであるLSATについて説明している。
その上で、2023年6月のLSAT分析結果を用いて、各種安定性問題の発生状況を分析した。その結果、全体の4.86%の事例で何らかの安定性問題が発生しているが、その中でも周波数安定性、特にRoCoFが主要な問題となっていることが明らかになった。
さらに、慣性、需要、風力発電量といった系統条件とRoCoF、ナディア、ゼニスといった周波数安定性指標との相関関係を分析した。その結果、低慣性、低需要、高風力発電量の条件下で周波数安定性問題が多く発生することが示された。
以上より、現時点ではAIPSにおける主要な安定性制約はRoCoFであり、系統運用者はこの問題に対処するための対策を検討している。
統計
2023年6月の全LSAT事例数は8594件
全事例中、安定性問題が発生したのは418件(約4.86%)
周波数安定性問題が全体の45%以上を占める
RoCoFが全体の27.75%を占め、最も大きな問題
引用
"現時点では、AIPSにおける主要な安定性制約はRoCoFに関連している。"
"低慣性、低需要、高風力発電量の条件下で周波数安定性問題が多く発生する。"