核心概念
本稿では、多数の点からなる凸多面体に対して、点を多面体に射影する問題と2つの多面体間の距離を求める問題を高速に解くための一般的な高速化手法を提案する。
要約
概要
本論文は、多数の点の凸包として定義される多面体に対して、点のユークリッド射影を計算し、2つの多面体間の距離を計算するための高速化手法を提案している。この手法は、既存の任意のアルゴリズムに適用可能なメタアルゴリズムとして提示されている。
論文の前半では、$\mathbb{R}^d$ 上の有限個の点の集合の凸包として定義される多面体$P$と、与えられた点$z$に対して、$z$から$P$へのユークリッド射影を計算する問題を扱う。特に、点の数$\ell$が空間の次元$d$よりもはるかに大きい場合($\ell \gg d$)の高速化手法について議論する。
提案される高速化手法は、元の多面体$P$の「小さな」部分多面体$P_n$を選び、与えられた点$z$の$P_n$への射影$y_n$を求めることを繰り返す。この射影が$z$の$P$への射影と一致する場合、アルゴリズムは終了する。そうでない場合は、$P_n$のいくつかの点を置き換え、新しい部分多面体$P_{n+1}$を構築し、$z$の$P_n$への射影が元の多面体$P$への射影と一致するまで、同じ手順を繰り返す。
このメタアルゴリズムの核心は、部分多面体$P_n$から点を置き換える交換規則$E$にある。論文では、距離減衰条件を満たす交換規則について議論し、「最急降下交換規則」と呼ばれる具体的な交換規則を提案している。
論文の後半では、提案された高速化手法を、有限個の点の集合の凸包として定義される2つの凸多面体間のユークリッド距離を計算する問題に拡張する。ここでも、各集合の点の数が空間の次元よりもはるかに大きい場合に有効な手法について議論する。