核心概念
本稿では、血管内光干渉断層法(IV-OCT)画像において、深層学習ベースの3次元マルチオブジェクトセグメンテーションを用いてPCIステント密着性を評価する新しい3次元距離-色分け評価(DccA)法を提案する。
文献情報: Qin, X., Huang, H., Lin, S., Zeng, X., Cao, K., Wu, R., ... & Ni, G. (2024). 3D Distance-color-coded Assessment of PCI Stent Apposition via Deep-learning-based Three-dimensional Multi-object Segmentation. IEEE Transactions on Medical Imaging.
研究目的: 冠動脈疾患(CAD)に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後のステント留置において、ステントの密着状態を正確に評価することは、ステント内再狭窄の予防と診断に不可欠である。本研究では、血管内光干渉断層法(IV-OCT)画像を用いて、ステントと血管内腔の3次元的な距離を色分けして評価する自動化された新しい方法を開発することを目的とした。
方法: 本研究では、深層学習ベースの3次元マルチオブジェクトセグメンテーションを用いて、IV-OCT画像からステントと血管内腔を自動的にセグメンテーションする新しい手法を開発した。具体的には、2次元および3次元畳み込みを統合した空間マッチングネットワークを提案し、IV-OCT画像の面内および面間の特徴を効果的に抽出できるようにした。さらに、低輝度または組織様の特徴を持つ微妙なステントの検出を改善するために、VGG19ネットワークに基づく完全自動スタイル転送戦略を導入し、微妙なステントを含むデータセットを生成した。セグメンテーション後、ステントと血管内腔の距離を計算し、HSV色空間にマッピングすることで、ステントの密着状態を3次元的に可視化した。
主な結果: 提案手法を57例のIV-OCTプルバックデータセット(21,375断面)を用いて評価した結果、ステントセグメンテーションにおいて高い精度(0.973±0.062)、Dice係数(0.948±0.080)、IoU(0.911±0.121)を達成した。また、血管内腔のセグメンテーションにおいても、既存の深層学習ネットワークに匹敵する精度を達成した。さらに、提案手法を用いて作成した3次元距離-色分け画像は、ステントの密着状態を視覚的にわかりやすく表示することができ、臨床医によるステント留置の評価を支援する可能性が示唆された。
結論: 本研究で開発した深層学習ベースの3次元距離-色分け評価法は、IV-OCT画像を用いたPCIステント密着性の評価において、正確かつ自動化された客観的な評価を提供する。この技術は、ステント内再狭窄のリスクの高い患者を特定し、個別化された治療戦略を立てるために役立つ可能性がある。
今後の研究: 今後の研究では、より大規模で多様なデータセットを用いて提案手法の汎化性能を評価する必要がある。また、深層学習モデルの解釈可能性を高め、臨床現場での適用を促進するために、セグメンテーション結果の信頼性評価や、臨床医が理解しやすい視覚化方法の開発などが求められる。
統計
57例のIV-OCTプルバックデータセット(21,375断面)を用いて評価
ステントセグメンテーションにおいて高い精度(0.973±0.062)、Dice係数(0.948±0.080)、IoU(0.911±0.121)を達成
距離の閾値は0.3 mm
各IV-OCTデータの自動分析には平均70秒かかる