核心概念
タンパク質の構造変化に関与する低周波振動を自然な集団変数として用いることで、タンパク質の構造変化を高速かつ効率的にサンプリングできる。
要約
タンパク質の構造変化の高速サンプリング:低周波振動を用いた効率的な解析手法
本論文は、タンパク質の構造変化を高速かつ効率的にサンプリングするための新しい手法を提案する研究論文である。
タンパク質の機能は、その立体構造だけでなく、様々な構造間の動的な遷移に依存する。しかし、タンパク質の構造変化をシミュレーションするには、従来の手法では膨大な計算コストがかかるため、高速かつ効率的なサンプリング手法の開発が課題となっていた。
本研究では、タンパク質の構造変化に関与する低周波振動に着目し、これを自然な集団変数として用いることで、構造変化を高速かつ効率的にサンプリングする手法を開発した。具体的には、以下の手順でシミュレーションを行った。
5種類のタンパク質(HEWL、HIV-1プロテアーゼ、MCL-1、RBP、KRAS)について、それぞれ20ナノ秒の平衡化分子動力学(MD)シミュレーションを5回ずつ実行した。
各MDトラジェクトリーに対して、周波数選択的非調和(FRESEAN)モード解析を行い、低周波振動モードを抽出した。
抽出した低周波振動モードを集団変数として用い、well-temperedメタダイナミクスシミュレーションを100ナノ秒間実行した。
得られたトラジェクトリーから自由エネルギー地形を構築し、構造変化の経路や自由エネルギー障壁を解析した。