核心概念
従来、単量体で非processiveなモータータンパク質と考えられていたKidは、実際にはホモ二量体を形成し、微小管に沿ってprocessiveに移動することで染色体を輸送する。
要約
Kidによる染色体輸送のメカニズムに関する新たな発見
本論文は、細胞分裂過程における染色体運動を担うタンパク質Kidの移動メカニズムに関する新たな発見を報告している。従来、Kidは単量体で非processiveなモータータンパク質と考えられてきたが、本研究はKidがホモ二量体を形成し、微小管に沿ってprocessiveに移動することを示した。
細胞分裂過程において、染色体は紡錘体赤道面に向かって移動する。この染色体運動は、微小管に沿って移動するモータータンパク質によって駆動される。Kidは、細胞分裂前期において染色体を紡錘体微小管に沿って移動させる染色体運動タンパク質である。従来、Kidは単量体で非processiveなモータータンパク質と考えられてきた。これは、2つのモータードメインを用いて積み荷を輸送する典型的なキネシンとは異なる。しかし、この考え方は、Kidがどのようにして微小管に沿って染色体を輸送するのかという疑問を投げかけていた。
本研究では、全長Kidがホモ二量体を形成し、微小管に沿ってprocessiveに移動することを示した。ヒトとアフリカツメガエルのKidはどちらも、微小管に沿って約70 nm/秒の速度で移動した。Kidの動きは、processiveな移動中に頻繁な拡散運動を特徴とすることを見出した。ヒトとアフリカツメガエルのKidはどちらも、全長の形ではサイズ排除クロマトグラフィー分析で二量体画分に溶出されたが、質量光測定分析ではほとんどが単量体に解離した。Kidの stalk 領域内にある保存されたコイルドコイルドメインは、ホモ二量体形成が可能であるだけでなく、Kidのprocessive性にも必要とされることがわかった。さらに、Kidのstalkドメインは、KIF1Aのモータードメインにprocessiveな活性を付加することができ、これはKidのstalkドメインが機能的なネックリンカーと二量体化能力、すなわちキネシンモータードメインのprocessive性の前提条件を含んでいることを示唆している。