核心概念
AIモデルを使って、これまでにない新規タンパク質を設計することで、新薬や新しいワクチンの開発が可能になりつつある。
要約
本記事は、AIが新薬開発に及ぼす影響について3部構成の第3部である。
第1部では、AIを使った臨床試験の高速化と効率化について説明した。第2部では、既存薬の新用途探索にAIが活用されていることを紹介した。
第3部では、AIモデルを使って全く新しいタンパク質を設計する取り組みについて解説している。
具体的には、OpenAIのDALL-Eなどのテキストから画像を生成するAIモデルの技術を応用し、これまでにない新規タンパク質構造を生成することができるようになってきた。これらの人工設計タンパク質は、新薬や新ワクチンの開発につながる可能性がある。
ワシントン大学のグループは、AIで設計した新規タンパク質がCOVID-19ワクチンとして海外で承認されている。また、Absci社は炎症性腸疾患の新薬候補を開発中で、2025年の臨床試験開始を目指している。
さらに、タンパク質の結合ポケットを予測するAIモデルの開発も進んでおり、これにより「不可能」とされていた標的タンパク質への新薬開発も期待できるようになってきた。
このように、AIを活用したタンパク質設計技術の進歩により、新薬開発のスピードと効率が大幅に向上する可能性がある。従来の新薬開発プロセスでは5年半かかり1億ドルもかかっていたものが、2年で1500万ドルで実現できるようになるという試算もある。
統計
新薬開発に要する期間が5年半から2年に短縮される可能性がある
新薬開発コストが1億ドルから1500万ドルに削減される可能性がある
引用
「初めて、AIシステムが数秒で、高度に現実的なタンパク質構造を制御可能な方法で生成できるようになった」(Namrata Anand博士)
「従来の100万ドルを1つの薬剤に投資するのではなく、5~10の薬剤に投資し、より早期に臨床試験に進めることができるようになる」(Sean McClain CEO)