核心概念
StereoSiTEは、空間トランスクリプトミクスデータを用いて、iTME内の細胞間相互作用と遺伝子発現の空間的関係を解明するフレームワークである。
要約
StereoSiTE: 空間トランスクリプトミクスデータを用いたiTME解析フレームワーク
本稿では、空間トランスクリプトミクス(ST)データを用いて、免疫腫瘍微小環境(iTME)における細胞間相互作用と遺伝子発現の空間的関係を解明するフレームワーク、StereoSiTEについて解説する。
StereoSiTEは、細胞近傍(CN)解析と空間細胞間相互作用強度(SCII)という2つの主要なモジュールから構成される。
細胞近傍(CN)解析
CN解析では、まず、STデータから得られた遺伝子発現プロファイルを用いて、組織内の細胞の種類と分布を推定する。次に、細胞の種類とその空間的な配置に基づいて、組織を複数のCNに分割する。各CNは、それぞれ異なる細胞組成と機能を持つiTMEの単位とみなすことができる。
空間細胞間相互作用強度(SCII)
SCIIは、細胞間の空間的な距離と遺伝子発現の両方を考慮して、細胞間の相互作用の強さを定量化するアルゴリズムである。SCIIを用いることで、特定のCN内における細胞間の相互作用を詳細に解析することができる。
本稿では、免疫アゴニスト治療を受けた異種移植モデルのSTデータを用いて、StereoSiTEの有用性を示している。
iTMEのCNへの分割
StereoSiTEを用いることで、異種移植モデルのiTMEを、それぞれ異なる細胞組成を持つ7つのCNに分割することができた。
個々のCNに関するiTMEの解析
各CNにおける遺伝子発現プロファイルを解析した結果、CN5において好中球の顕著な増加とSTINGシグナル伝達の活性化が認められた。
SCIIを用いた細胞間相互作用の解析
CN5における細胞間相互作用をSCIIを用いて解析した結果、非免疫細胞と好中球との間、および好中球同士の間で頻繁な相互作用が認められた。
転写因子(TF)解析とタンパク質間相互作用(PPI)ネットワーク解析
CN5における遺伝子発現制御ネットワークを解析した結果、NF-κBとIRF1という2つの転写因子が、それぞれIL-1βとIFN-βの発現を制御していることが明らかになった。また、PPIネットワーク解析の結果、IL-1βがCCL4、CXCL2、CXCL1、IL-6などの他のタンパク質と頻繁に相互作用していることが明らかになった。