核心概念
本稿では、顔アニメーションにおいて頭蓋骨の動きと表情筋の動きの分離を正確に行うための新しい手法である「頭蓋骨カービング」を提案する。
要約
論文概要
書誌情報
Mathieu Lamarre, Patrick Anderson, and Étienne Danvoye. 2024. A Theory of Stabilization by Skull Carving
研究目的
顔アニメーションにおいて、頭蓋骨の動きと表情筋の動きを正確に分離し、より自然で制御しやすいアニメーションモデルを作成する。
手法
- 複数の表情の3D顔スキャンデータから、符号付き距離関数(SDF)とニューラルネットワークを用いて、頭蓋骨の形状を近似する「安定化ハル」を生成する。
- 安定化ハルと各表情スキャンデータとの距離を最小化するように、剛体変換を最適化する。
- この最適化には勾配降下法を用い、微分可能な等値面抽出法であるFlexicubeを用いて安定化ハルを表現することで、高速かつ正確な計算を実現する。
主な結果
- 提案手法は、既存手法と比較して、頭蓋骨の動きと表情筋の動きの分離精度が向上することを確認した。
- 特に、従来手法では困難であった、複数の表情筋が同時に大きく動く場合においても、高精度な安定化を実現できることを示した。
結論
頭蓋骨カービングは、顔アニメーションの安定化において、従来手法よりも正確でロバストな新しい手法である。
意義
本研究は、顔アニメーションの品質向上に貢献するだけでなく、表情認識や顔モデル生成など、関連する様々な分野への応用が期待される。
制限と今後の研究
- 現状では、処理に時間を要するため、リアルタイム処理への対応が課題として残る。
- また、安定化ハルの生成には、ある程度の数の表情データが必要となるため、データセットの拡充が今後の課題となる。
統計
32人の多様なサンプルデータセットを用いて評価を行った。
サンプルは、男女比、人種(アジア人、黒人、ラテン系、白人)、年齢(若年層、高齢層)が均等になるように選定された。
各被験者につき、4~10個(平均7個)の表情スキャンデータを収集した。
上顎の歯が見える表情のデータは、合計227個であった。
頭蓋骨カービングを用いることで、上顎の歯の位置合わせエラーを最大でも3mm以下に抑えることができた。
これは、他の既存手法と比較して、最も優れた結果であった。
引用
"Our skull carving method works on a set of 3D facial static expression scans. It doesn’t depend on a specific capture method and only requires a 3D point cloud or unstructured triangle mesh per expression and a template mesh aligned to the neutral to be used as the reference coordinate frame"
"Our main hypothesis is that for each expression, there is always a large enough region of the stable hull that is close enough to the scan surface to maximize the zero distance mode in the skull coordinate frame."
"Skull carving is superior to all other methods."