核心概念
強い干渉が存在するセルフリーISACシステムにおいて、移動目標検出のための時空間適応処理とビームフォーミングの共同設計により、レーダーSINRを最大化できる。
要約
本論文は、セルフリーISACシステムにおける協調的な目標検出とマルチユーザー通信の問題を扱っています。送信APからの強い干渉が存在する状況下で、移動目標検出のためのレーダーSINRを最大化することを目的とし、通信SINRの制約と送信電力の制限を満たすように設計されています。
研究目的
- 複数の送信APが複数のユーザーにサービスを提供し、同時に移動目標を照射するセルフリーISACシステムにおいて、センシングAPにおける目標検出性能を向上させる。
- 送信APからの干渉が強い状況下で、移動目標の検出性能を向上させるために、時空間適応処理(STAP)と送受信ビームフォーミングの共同設計手法を提案する。
方法
- 複数の送信AP、1つのセンシングAP、複数のユーザー、1つの移動目標で構成されるセルフリーISACシステムのモデルを構築。
- 伝搬遅延とドップラーシフトを考慮したセンシングモデルを確立。
- レーダー出力SINRを最大化し、通信SINR要件と電力制限を満たすように、送信ビームフォーミングと受信フィルターを共同で最適化するアルゴリズムを開発。
- 開発したアルゴリズムの有効性を検証するために、コンピュータシミュレーションを実施。
主な結果
- 提案手法は、従来の空間ビームフォーミングのみを用いた手法と比較して、レーダーSINRが約2dB向上することを確認。
- 提案手法は、通信SINR要件が厳しい場合でも、高いレーダーSINRを維持できることを確認。
結論
- セルフリーISACシステムにおいて、移動目標検出のための時空間適応処理とビームフォーミングの共同設計は、目標検出性能を向上させるための有効な手段である。
- 提案手法は、強い干渉が存在する環境下でも、信頼性の高い目標検出とマルチユーザー通信を実現できる可能性を示唆。
意義
本研究は、次世代の無線通信システムである6Gにおいて期待されるISAC技術の性能向上に貢献する。特に、セルフリーネットワークにおける干渉抑制と目標検出性能のトレードオフについて、重要な知見を提供する。
制限と今後の研究
- 本論文では、単一の移動目標検出を想定しており、複数の目標が存在する場合への拡張は今後の課題である。
- 提案手法は、完全なチャネル状態情報が得られることを前提としており、チャネル推定誤差の影響については今後の検討が必要である。
統計
送信AP数:6
センシングAP数:1
ユーザー数:15
目標速度:30m/s
送受信アンテナ数:4
キャリア周波数:24GHz
帯域幅:10MHz
サンプリング周波数:20MHz
ノイズパワー:-80dBm