本稿は、空中超音波を用いて非接触で熱刺激と機械刺激を同時に提示する手法を提案する研究論文である。
近年、VR技術の普及に伴い、現実の触覚情報を再現するハプティックディスプレイの研究が注目されている。特に、仮想空間の温度や仮想物体の温度情報を表現するために、温度感覚を提供するディスプレイは重要である。装置に直接触れることなく温度刺激を提示することで、ユーザーの動きを制限しない、より自然で没入感のあるVR体験を提供することが可能となる。
本研究では、強力な超音波を皮膚に集束させることで、機械的圧力と温度刺激を同時に提示する手法を提案する。従来の可視光レーザーやハロゲンランプを用いる方法とは異なり、人間の目には見えないため、ARのように現実世界に干渉するアプリケーションにも有効であると考えられる。
提案手法の性能を評価するために、予備実験を実施した。その結果、静的な超音波刺激では5.0秒で5.4℃、振動刺激(50Hzの矩形波振幅変調)では5.0秒で4.5℃の温度上昇が確認された。この結果は、手のひらの順応温度が33℃の場合、熱感覚を感じる閾値である0.2℃を超えており、温度感覚の提示に十分な性能であると考えられる。
本研究では、空中超音波を用いて機械刺激と熱刺激を非接触で提示する手法を提案した。今後は、2つの刺激を同時に提示した場合に生じる心理的な変化について調査する予定である。
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