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4カ国におけるAPCに関する調査からみる、研究者が論文出版料を負担する場合の影響と傾向


核心概念
発展途上国の研究者にとって、論文出版料(APC)は依然として大きな障壁となっており、特に商業的なオープンアクセスモデルが普及する中で、資金調達の課題や分野・国による格差が浮き彫りになっている。
要約

研究概要

本稿は、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、南アフリカの4カ国における、論文出版料(APC)の影響と動向に関する実証的な調査結果を報告している。2023年後半に実施されたオンラインアンケート調査(回答者数13,577人)のデータに基づき、過去5年間のAPCジャーナルへの掲載状況、APCの支払い方法と金額、国際共同研究との関連性について分析している。

各国における状況

アルゼンチン
  • APCジャーナルへの掲載率は44.1%と最も低く、若い研究者ほどAPCジャーナルへの掲載が少ない傾向が見られる。
  • APCの支払いは、自身の研究プロジェクト資金、Waiver、国際共同研究者からの負担が主であり、機関レベルの支援は少ない。
  • 人文社会科学分野では、男性研究者のAPCジャーナル掲載率が女性研究者の約2倍に上るなど、分野や年齢、性別によって大きな差が見られる。
ブラジル
  • APCジャーナルへの掲載率は65.9%であり、若い研究者ほどAPCジャーナルへの掲載が多い傾向が見られる。
  • APCの支払いは、自身の研究プロジェクト資金、個人資金、機関のAPC特定資金が主である。
  • 医療・保健科学分野、生物科学分野のAPCが高額である。
メキシコ
  • APCジャーナルへの掲載率は66.1%であり、若い研究者ほどAPCジャーナルへの掲載が多い傾向が見られる。
  • APCの支払いは、自身の研究プロジェクト資金、個人資金、機関のAPC特定資金が主である。
  • APCを支払わない論文掲載が最も多い国である。
南アフリカ
  • APCジャーナルへの掲載率は77.4%と最も高く、若い研究者ほどAPCジャーナルへの掲載が多い傾向が見られる。
  • APCの支払いは、自身の研究プロジェクト資金、機関のAPC特定資金が主であり、高額なAPCを支払うケースも多い。
  • 人文社会科学分野の研究者のAPCジャーナル掲載率が他の国と比較して高い。これは、南アフリカで多くの出版社とRead and Publish契約が締結されていることが影響している可能性がある。

結論

本稿は、発展途上国の研究者にとって、APCが依然として大きな障壁となっており、資金調達の課題や分野・国による格差が浮き彫りになっていることを示している。

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統計
回答者数:13,577人 調査対象国:アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、南アフリカ 調査期間:2023年後半 過去5年間のAPCジャーナルへの掲載率:南アフリカ(77.4%)、メキシコ(66.1%)、ブラジル(65.9%)、アルゼンチン(44.1%)
引用
"Latin America is a pioneering region in non-commercial OA, with journals supported by university and public scientific institutions, the vast majority of which do not charge APCs." "In Africa, arguments have been made that the gold OA model, which relies on APCs, creates an economic barrier that limits the circulation of African-published research, while more equitable green OA models are not yet able to attract African researchers." "Recent studies show that authors from the Global South are underrepresented in the publication of OA articles, suggesting that APCs remain a significant obstacle for these researchers."

深掘り質問

オープンアクセス出版の拡大による学術コミュニケーションへの影響は、長期的に見てどのようなものになるだろうか?

オープンアクセス出版の拡大は、学術コミュニケーションをよりオープンかつ公平なものへと変容させる可能性を秘めていますが、同時にいくつかの課題も孕んでいます。 長期的な影響: 学術情報のアクセス拡大と知識の普及促進: オープンアクセスは、地理的、経済的な障壁を取り払い、世界中の研究者、学生、そして一般の人々に研究成果へのアクセスを提供します。これは、特に研究資金が限られている発展途上国の研究者にとって大きなメリットとなります。結果として、学術情報の流通が促進され、知識の普及、イノベーションの加速、社会全体の発展に貢献すると期待されます。 研究の可視性と影響力の向上: オープンアクセスにより、より多くの読者に論文を届けることが可能となり、引用数や論文のダウンロード数増加といった形で研究の可視性と影響力が向上する可能性があります。 学際的な研究の促進: オープンアクセスは、異なる分野の研究者間の情報共有を促進し、学際的な研究や共同研究を活性化させる可能性があります。 研究の透明性と再現性の向上: オープンアクセスは、研究データやコードの公開を促進し、研究の透明性と再現性を向上させる効果も期待できます。 課題: APCの問題: 商業的なオープンアクセスモデルにおけるAPCの高騰は、資金力のある研究機関や研究者に有利に働き、研究の公平性に影響を与える可能性があります。 質の担保: オープンアクセスジャーナルの質を維持し、質の低いジャーナルの増加を防ぐための適切な評価システムの構築が重要となります。 著作権と知的財産権の問題: オープンアクセス化に伴い、著作権や知的財産権の管理、二次利用に関するルール整備が必要となります。 結論: オープンアクセス出版の拡大は、学術コミュニケーションに大きな変化をもたらす可能性を秘めています。その影響を最大限に引き出し、課題を克服するためには、APCの問題への対応、質の担保、著作権問題への対応など、多岐にわたる取り組みが必要不可欠です。

商業的なオープンアクセスモデルではなく、機関リポジトリやプレプリントサーバーなどを活用したグリーンオープンアクセスを推進することで、APCの問題を解決できるのではないか?

グリーンオープンアクセスは、商業的なオープンアクセスモデルに伴うAPCの問題を解決する有効な手段となりえます。 グリーンオープンアクセスのメリット: APCの回避: 機関リポジトリやプレプリントサーバーに論文を掲載することで、高額なAPCを支払うことなくオープンアクセスを実現できます。 研究者の経済状況に左右されない出版: グリーンオープンアクセスは、研究者の経済状況に関わらず、誰もが等しく研究成果を公開する機会を提供します。 学術機関の役割強化: 機関リポジトリの運用を通じて、学術機関は研究成果の管理、発信において重要な役割を担うことができます。 課題: 可視性と影響力: グリーンオープンアクセスは、商業的なオープンアクセスジャーナルに比べて、論文の可視性や影響力が劣る可能性があります。 質の担保: プレプリントサーバーに掲載される論文は、査読を受けていないものが多いため、質の担保が課題となります。 インセンティブの不足: 研究者にとって、機関リポジトリへの論文掲載は、業績評価において必ずしも高く評価されない場合があり、インセンティブが不足している現状があります。 結論: グリーンオープンアクセスを推進するためには、機関リポジトリやプレプリントサーバーの機能強化、論文の可視性と影響力向上のための取り組み、研究者に対するインセンティブの提供など、様々な対策を講じる必要があります。

研究成果のオープン化が進む中で、研究者の評価システムも論文出版数やジャーナルのインパクトファクター以外の指標を重視していくべきではないか?

研究成果のオープン化が進む中で、従来の論文出版数やジャーナルのインパクトファクターに偏重した評価システムを見直し、多様な研究成果やその影響度を適切に評価できるシステムを構築することが求められています。 新しい評価指標: 論文のダウンロード数、閲覧数、引用数: オープンアクセス化により、論文へのアクセス状況に関するデータを取得することが容易になりました。これらのデータは、論文の影響度を測る指標として活用できます。 Altmetrics: ソーシャルメディアでの言及数、ニュース記事での引用数、ブログ記事での言及数など、従来の学術的な指標では測れない論文の影響度を測る指標としてAltmetricsが注目されています。 データの共有、コードの公開: オープンサイエンスの促進、研究の透明性と再現性の向上という観点から、データの共有やコードの公開を評価システムに組み込むことが重要です。 アウトリーチ活動: 研究成果を社会に還元するためのアウトリーチ活動の重要性が高まっており、講演活動、市民向けイベントへの参加、政策提言活動なども評価対象とすることが考えられます。 評価システムの多様化: 分野ごとの特性に配慮: 分野によって研究成果の発表形式や評価指標は異なるため、分野ごとの特性に配慮した評価システムを構築する必要があります。 質的な評価: 論文の質や独創性、研究の社会的意義などを評価するために、従来の量的評価だけでなく、質的な評価を取り入れることが重要です。 結論: 研究成果のオープン化が進む中で、研究者の評価システムも時代に即した形に進化していく必要があります。多様な研究成果やその影響度を適切に評価できる、より公平で透明性の高い評価システムの構築を目指すべきです。
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