核心概念
確率的有限オートマトンによって計算される言語は、有限モノイドによって代数的に認識できる。
書誌情報
Birkmann, F., Milius, S., Urbat, H., & Wißmann, T. (2023). Algebraic Language Theory with Effects. In Proceedings of the 38th Annual ACM/IEEE Symposium on Logic in Computer Science (LICS '23). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 1–14. https://doi.org/10.1145/3578061.3583025
研究目的
本稿は、確率的有限オートマトン(PFA)によって計算される言語に対する代数的言語理論の構築を目的とする。具体的には、PFAで計算可能な言語が、有限モノイドによる認識という枠組みでどのように捉えられるかを明らかにすることを目指す。
方法論
本稿では、モナドを用いて計算効果を表現する一般的な枠組みを採用し、PFAを特殊なケースとして捉える。まず、有限モノイドによる言語認識の概念を、確率的モノイド射と凸モノイドという二つの方法で確率的に拡張する。次に、これらの拡張がPFAで計算可能な言語と正確に対応することを示す。
主な結果
確率的言語を認識する二つの代数的方法、すなわち確率的モノイド射による認識と凸モノイドによる認識は、PFAで計算可能な言語と正確に対応する。
確率的モノイド射による認識は、確率的言語の効果的な性質を強調する一方で、凸モノイドによる認識は、従来の普遍代数に基づいている。
これらの結果は、モナドが計算効果と代数的理論の両方を抽象化する役割を果たすことを利用して導き出される。
結論
本稿は、PFAで計算可能な言語に対する代数的言語理論の基礎を築き、PFAで計算可能な言語が有限モノイドによって代数的に認識できることを示した。
意義
本稿の成果は、確率的言語の代数的理解を深め、PFAのさらなる理論的研究の基盤となる。また、モナドを用いた計算効果の代数的取り扱いは、他の計算モデルにも応用できる可能性がある。
制限と今後の研究
本稿では、PFAで計算可能な言語の代数的認識可能性について論じたが、具体的な言語クラスの代数的特徴付けや決定可能性については今後の課題として残されている。また、本稿で導入された効果を伴う代数的言語理論を、PFA以外の計算モデル、例えば非決定性確率的オートマトンや重み付きオートマトンなどに適用することも興味深い課題である。