核心概念
機械学習を用いて、ガラス状態における原子の局所構造と、熱的・機械的刺激に対する応答性の関係性を解析した結果、二元混合系では二体相関、高分子ガラスでは二体・三体相関が重要であることが示唆された。
要約
原子クラスター展開を用いたガラスにおける機械的および熱的再配置の局所構造解析
本論文は、原子クラスター展開(ACE)を用いて、ガラス状態における原子の局所構造と、熱的・機械的刺激に対する応答性の関係性を機械学習により解析した研究について述べている。ガラス状態における原子の運動は、均一な液体状態とは異なり、空間的・時間的に不均一な挙動を示す。この動的な不均一性は、ガラス転移温度以下での冷却過程や、ガラス状態での変形時に観察される。本研究では、この動的な不均一性を、原子の局所構造と関連付けることを目的としている。
本研究では、3種類のモデルガラス系(FENE ビーズ-バネ高分子モデル、Kob-Andersen (KA) 系、Wahnstrom 混合系)を用いて、熱活性化と機械的活性化の2つの異なる活性化メカニズムにおける構造とダイナミクスの相関を調べた。熱活性化は、平衡状態にある過冷却液体中で自発的に起こる再配置を、機械的活性化は、ゼロ温度で単純な準静的せん断を受けたガラス中で起こる再配置をシミュレートすることで実現した。局所的な粒子再配置の指標としては、D2min(i)尺度を用いた。これは、粒子iを中心とした球形領域における、基準配置に対する非アフィン残留変形を表す。構造の記述には、原子クラスター展開(ACE)を用いた。これは、原子の局所環境を記述する普遍的で完全な線形基底を提供する。ACEは、展開の次数を増やすことで系統的に改善することができ、これにより、多体相関の重要性を評価することができる。本研究では、最大3次までの相関(すなわち、4体項まで)を考慮した。