核心概念
本研究では、大腸組織病理画像を用いて炎症性腸疾患の活動性を4段階(非活動期、軽度活動期、中等度活動期、重度活動期)に分類する深層学習モデルを開発し、その有効性を検証した。
要約
研究論文の概要
書誌情報
Das A, Shukla T, Tomita N, et al. Deep Learning for Classification of Inflammatory Bowel Disease Activity in Whole Slide Images of Colonic Histopathology. [出版待ち]
研究目的
本研究は、大腸組織病理画像を用いて炎症性腸疾患(IBD)の活動性を深層学習モデルを用いて分類することを目的とした。
方法
- ダートマス・ヒッチコック医療センターで2018年から2019年に治療を受けたIBD患者から得られた2,077枚の大腸組織病理画像(WSI)を対象とした。
- 画像は、消化器病理学の専門医によって、非活動期、軽度活動期、中等度活動期、重度活動期の4段階に分類された。
- MaskHITと呼ばれるVision Transformer(ViT)ベースの深層学習モデルを開発し、5分割交差検証を用いてモデルの性能を評価した。
- 細胞組成分析には、HoVerNetを用いて好中球の分布を定量化した。
主な結果
- 開発したViTモデルは、IBDの活動性を高い精度で分類することができた。加重平均AUCは0.871、適合率は0.695、再現率は0.697、F1スコアは0.695であった。
- 非活動期と軽度活動期の症例の分類において特に優れた性能を示した。
- 好中球の分布は、疾患活動性のレベルと有意に関連しており、活動性が高いほど好中球数が増加する傾向が認められた。
結論
本研究で開発した深層学習モデルは、IBDの活動性を高精度に分類することが可能であり、ルーチン診療におけるIBDの活動性評価の効率化と標準化に貢献する可能性がある。
意義
本研究は、深層学習を用いることで、従来の組織学的スコアリングシステムよりも簡便かつ客観的にIBDの活動性を評価できる可能性を示した点で意義深い。
限界と今後の研究
- 本研究は単一施設のデータを用いた後方視的研究であるため、今後、多施設共同研究によるモデルの汎化性能の検証が必要である。
- また、本研究では臨床的なアウトカムとの関連を評価していないため、今後、臨床データと組み合わせることで、より臨床的に有用なモデルの開発が期待される。
統計
データセットは、ダートマス・ヒッチコック医療センターで2018年から2019年に治療を受けたIBD患者から得られた2,077枚の大腸組織病理画像(WSI)から構成されている。
画像は、消化器病理学の専門医によって、非活動期、軽度活動期、中等度活動期、重度活動期の4段階に分類された。
開発したViTモデルの加重平均AUCは0.871、適合率は0.695、再現率は0.697、F1スコアは0.695であった。
非活動期症例の精度は82.1%、軽度活動期症例の精度は70.3%、中等度活動期症例の精度は47.8%、重度活動期症例の精度は66.8%であった。
引用
"Grading inflammatory bowel disease (IBD) activity using standardized histopathological scoring systems remains challenging due to resource constraints and inter-observer variability."
"Our work represents the first effort to develop a DL model that classifies grades of histopathological activity in WSIs of tissue slides from IBD patients, suitable for use by general pathologists who may not depend on formal histological scoring systems."