核心概念
複雑なAIシステムの設計と更新の自動化を目指し、微分不可能な計算ワークフローにも適用可能な新たな最適化フレームワーク「Trace」とその数学的基盤「OPTO」、そしてLLMベースの汎用的なOPTOオプティマイザ「OptoPrime」を提案する。
要約
Trace: 次世代の自動微分
本稿では、コードアシスタント、ロボット、コパイロットといったAIシステムの設計と更新の自動化を目的とした、新しい最適化フレームワーク「Trace」とその数学的基盤「OPTO (Optimization with Trace Oracle)」、そしてLLMベースの汎用的なOPTOオプティマイザ「OptoPrime」について解説する。
近年のAIシステムは、LLM、機械学習モデル、オーケストレーション、リトリーバー、ツールなどを統合した複雑なワークフローで構成される。これらのワークフローは、プロンプト、オーケストレーションコード、機械学習のハイパーパラメータなど、多様なパラメータを含むため、設計に多大な労力を要する。さらに、デプロイ後も開発者が手動で更新しない限り、ワークフローのエラーは解消されない。
Traceは、複雑な計算ワークフローをエンドツーエンドで最適化するフレームワークである。従来の自動微分フレームワークは微分可能なシステムに限定されていたが、Traceは微分不可能なワークフローにも適用可能である点が革新的である。
実行トレースの活用
Traceは、計算ワークフローを実行する際に生成される「実行トレース」を活用する。実行トレースは、計算過程における中間結果と、それらがどのように使用されたかを記録したものであり、自動微分における「逆伝播された勾配」に相当する。Traceは、この実行トレースを解析することで、豊富なフィードバックをパラメータに関連付け、効率的な最適化を実現する。
OPTO: 新しい最適化の枠組み
Traceは、OPTOと呼ばれる新しい数学的枠組みの上に成り立っている。OPTOでは、オプティマイザはパラメータを選択し、計算グラフと計算結果に対するフィードバックを受け取る。Traceは、計算ワークフローの最適化をOPTO問題に効率的に変換するツールと言える。
OptoPrime: LLMベースの汎用オプティマイザ
OptoPrimeは、OPTOのためのLLMベースの汎用的なオプティマイザである。OptoPrimeは、OPTOを疑似アルゴリズム問題のシーケンスに変換する。各反復において、実行トレースと出力フィードバックは疑似アルゴリズムの質問としてフォーマットされ、LLMに提示される。LLMは、その推論能力を用いて、グラフに基づいた推論を生成し、パラメータの変更を提案する。