核心概念
進化蓄積モデリング(EvAM)は、細菌が多剤耐性を獲得する進化経路を理解し予測するための強力な機械学習アプローチであり、AMRとの闘いにおける基礎生物学と応用アプローチの両方に大きな影響を与える可能性を秘めている。
要約
AMRにおける進化蓄積モデリング:レビュー論文の概要
本論文は、進化蓄積モデリング(EvAM)を用いて、細菌が多剤耐性(MDR)を獲得する進化経路を理解し予測する方法を解説したレビュー論文である。
AMRの現状と課題
抗菌薬耐性(AMR)は、世界中で深刻化する健康問題であり、特に開発途上国において深刻である。AMRは、病気の長期化、入院の必要性、高価な予備薬の使用など、社会に大きなコストをもたらす。
EvAMとは
EvAMは、進化するシステムが時間の経過とともに特徴を蓄積していく経路を、データを用いて学習する機械学習アプローチである。このアプローチは、がんの進行や進化生物学の分野で広く確立されているが、AMRの研究ではまだあまり利用されていない。
EvAMのAMRへの応用
EvAMは、病原体が進化するにつれて薬剤耐性やAMRの特徴がどのように獲得されるかを明らかにし、次の進化ステップを予測し、AMRの特徴間の影響を特定し、地域、人口統計などによるMDR進化の違いを探求するために使用できる。
MDR進化のケーススタディ:結核菌
論文では、ロシアの結核菌のデータセットを用いたMDR進化のケーススタディを紹介している。このケーススタディでは、10種類の薬剤それぞれに対する耐性または感受性を記述した耐性プロファイルを特徴量として使用し、1000株の配列決定された分離株を含むデータセットを対象としている。
EvAMの利点
- 時系列データがなくても、特徴の順序や影響に関する情報を推測できる。
- 薬剤耐性の獲得順序、耐性間の影響、将来の行動の予測、国ごとの類似点や相違点を学習できる。
EvAMの限界と今後の展望
- 多くのEvAMアプローチは、特徴が不可逆的に獲得されることを前提としているが、プラスミドなどを介した水平伝播など、可逆的な獲得も考慮する必要がある。
- 特定のデータセットから推測された進化ダイナミクスが、細菌自体に固有のものなのか、特定の選択圧に対する反応なのかを解明する必要がある。
- 連続値や不確実なデータへの対応など、AMR研究におけるEvAMの適用範囲を拡大するためのさらなる研究が必要である。
結論
EvAMアプローチは、AMRの進化に関するデータに基づいた研究において貴重な役割を果たす可能性を秘めている。
統計
2019年と2021年には、それぞれ127万人と114万人の死亡が細菌性AMRに起因するものであった。
1000株の分離株のうち395株は完全な耐性プロファイルを持つ。
引用
AMR is one of the World Health Organization’s top 10 threats to human health.
The dynamics of any evolving system where a given observation can be represented by a collection of presence/absence markers can be analysed using EvAM.