核心概念
本稿では、宇宙線反重陽子のフラックスを予測する新しい機械学習ツール「sDarkRayNet」を開発し、ダークマター探索におけるその有用性を示した。
参考文献: Heisig, J., Korsmeier, M., Kr¨amer, M., Nippel, K., & Rathmann, L. (2024). DarkRayNet: Emulation of cosmic-ray antideuteron fluxes from dark matter. Journal of Cosmology and Astroparticle Physics.
研究目的: 本研究の目的は、ダークマター探索における宇宙線反重陽子の重要性を考慮し、地球近傍における反重陽子フラックスとその理論的不確実性を正確に予測することである。
方法: 本研究では、反重陽子フラックスの予測にあたり、モンテカルロシミュレーションと機械学習を組み合わせた新しいアプローチを採用している。まず、モンテカルロシミュレーションを用いて、ダークマターの消滅過程、反重陽子の合体、宇宙線伝播をシミュレートする。次に、これらのシミュレーション結果を用いて、反重陽子フラックスを高速に予測するニューラルネットワークエミュレータ「sDarkRayNet」を開発した。
主な結果: sDarkRayNetを用いることで、広範囲の消滅チャネルとその組み合わせに対して、伝播した反重陽子エネルギースペクトルを高速に予測することが可能となった。また、反重陽子合体と宇宙線伝播のモンテカルロシミュレーションを見直し、両方のプロセスにおける不確実性を検討した結果、Λb生成率の不確実性を考慮し、2つの異なる伝播モデルを検討した結果、AMS-02は、宇宙線反陽子の制限と整合性を保つためには、ダークマター質量の限られた範囲、特に20 GeV未満の領域にのみ感度を持つことがわかった。この領域は、今後予定されているGAPS実験によって独立に探査することができる。
結論: 本研究で開発されたsDarkRayNetは、宇宙線反重陽子フラックスの高速かつ正確な予測を可能にする強力なツールである。sDarkRayNetを用いることで、将来の観測結果の解釈をより確実に行うことが期待される。
統計
ダークマターの質量が20 GeV未満の領域において、AMS-02は宇宙線反陽子の制限と整合性を保ちながら感度を示す。
GAPS実験は、AMS-02では観測できない低エネルギー領域の反重陽子を検出できる可能性がある。
本研究では、反重陽子合体モデルのパラメータとして、pc = 210 +27
−25
+48
−47
MeVを採用している。